第21章 2月14日

第1話 期待だけはやめられない

2月14日。恋する乙女にとって、まさに戦いの1日、といったところだろうか。


そして、恋心関係なくソワソワするのが男たちである。


中高生の頃は、チョコレートを貰える可能性のあるなしに関わらず、1日ずっとクラス中が浮き足立ち、誰も彼もが下駄箱やら机の引き出しやらを確認していた。


しかし、今の俺は大学生。


下駄箱もなければ、引き出しもない。


となると、貰うとすれば対面で、ということになる。しかし、生憎今日は日曜日。ゼミもバイトもない。


しかも、ゼミには女性はいるものの、俺のバイトは教授の講義の手伝いだ。同僚はほとんどいないし、いたとしても女性はいなかった。


……どちらにせよ、個人的に会うような女性はいないのだ。たったひとり、あいつを除いて、ではあるが。


まあ、つまりは、バレンタインデーという日は、俺にとってただの平日──いや、今日は日曜日だから、休日だということだ。


世の中がチョコレートとピンクに彩られていようとも、特になにも関係ない。強いて言えば、15日からバレンタイン用のチョコが投げ売りされるので、それを買いに行くくらいだろうか。あれ、高いやつだから美味いんだよな。


……さて、そんなことを言っているわけだが。


「……貰えるのか……?」


ソワソワするのは、やめられないものなのだ。しかも、今年は貰える可能性が高いと踏んでいる。……多分。


男は子ども、なんて言われるのは、こういうところなのかもしれないな……。


そう思いつつ、心の隅に期待を置きながら、とりあえず二度寝することにした。バレンタインには普段と同じ振る舞いが非常に重要なのである。主に恥をかかないために──!

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