第4話 退屈しない待ち時間

さて、ケーキ屋の次はチキンを買うべく、みんな大好き雷系お爺さんのところへ来ているのだが。


「……先輩、あのお爺さんは雷は使えませんからね」


「さすがにわかってるぞ!? あとナチュラルに思考を読むのはやめろ! な!?」


「やめろと言われても、昔ならいざ知らず、今では意識してやってることじゃないですし……」


「それはそれで怖いんだが……」


そんな話をしつつ、時間を潰している。理由は単純で、クリスマスといえばチキン、という同じ思考の人間が多かったらしく、長蛇の列になっている。やはり、クリスマスといえばチキン、の思考は一般的だったようだ。


ちなみに列は、まったく動かない。動く気配もない。


「……そろそろ並ぶの面倒だな……」


「いやいや、もう10分並んでますからね。あとちょっとですし、頑張りましょうよ」


「それもそうか……」


一度並んでしばらく経ってしまうと、途中で抜けるのは勿体ない気がしてしまうのは事実だ。


「にしても、物好きだよな。わざわざチキン買うためにこんなに並ぶなんて」


「それ、わたしたちもですからね」


「いや、そうなんだが……。普通はここまで並んでるなら諦めないか?」


くるり、と周りを見渡すと、スーツの人が目につく。恐らくは会社帰りなのだろう。年齢層からすると、家族に買っていくのだろうか。その次が大学生、もしくは主婦らしき人々だ。後者はスーツの人と同じだろう。前者は、まあ、俺たちと同じ、なんとなく、という理由だろう。


「大学生、半分くらいはひとりか集団で、もう半分がカップルっぽいですね」


同じように列を見渡すべく、雨空が背伸びをしている。どうやらギリギリ見えないらしい。


「いや、全体を見るとひとりが1番多い。次がカップル。残りが集団だ」


「なるほど……。あの、先輩」


「ん? なんだ?」


「わたしたちも、カップルに見えるんですかね?」


「……そうかも、しれないな」


少し嬉しそうに、えへへー、とそう言った雨空から目を逸らす。


なんだか、顔が熱い。


「お、列が動いたぞ。あとどれくらいだろうな?」


前の人が動いたのをこれ幸いと話題を逸らす。


「あと10分いかないくらいじゃないですか?」


さっきの俺の言葉に機嫌を良くしたようで、上機嫌の雨空はそう返してくる。


こんな退屈しない待ち時間なら、もう少しくらいは待つのも悪くない。


そんな風に思って、また進まなくなった列に並び続ける。


……悪くはないが、会話をするのに立ちっぱなしである必要もないんだよなあ。

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