第2話 クリスマスといえば
あれだけ不満を並べても、大学生には守らなければならない最低ラインというものがある。
別に、講義に出る必要はない。
けれど、単位を取る必要はあるのだ。
つまり、単位が絡めば講義に出席せざるを得ないわけで。
一部の講義にのみ人は集まり、その他講義はほとんど人がいないか休講になっている。
その一部の講義になってしまった俺と雨空は、気分を落ち込ませながら講義へと出席した。
性格の悪い教授の性格の悪い言葉を聞いてから、テストを受ける。クリスマスイブに強制出席させたくせに難易度を上げるな……。わざわざ来たのにこれで単位を落とすなんてことがあったら立ち直れないぞ……。
テスト後に、げんなりとしながら帰路へとつく。常識的で良識と合理性を持ち合わせた素晴らしい教授は、休みにしているため、普段ならこのあともいくつか講義があるのだが、今日はない。すべての講義を行った教授はこの素晴らしい教授を見習ってほしい。
そう切に思っていると、左腕を、とんとん、と叩かれる。ちら、と左を見ると、想像通りに雨空がいた。
「先輩、一緒に帰りましょう」
「おう」
キャンパスを出て、横断歩道を渡る。その最中、危うく忘れるところだったことを思い出す。
「……なあ、雨空」
「はい」
「クリスマスといえば、ケーキだよな?」
「そうですね」
「というわけで、ケーキを買いに行こう」
ケーキを買うのを忘れていたのだ。ケーキのないクリスマスなど、餅のないお正月みたいなものである。……あ、クリスマス終わったら餅を買いに行こう。
うんうん、とひとりで頷いていると、不思議そうな顔をしながら、雨空が同意する。
「ですね、行きましょう! ……あ、あと晩ご飯どうします?」
ふむ、クリスマスイブの晩ご飯か。
あれしかない。
「チキンでは?」
「チキンですか?」
「そうだ。あの雷使えそうな白いお爺さんのところのチキン」
「なんですかその微妙な言い方……。いや、伝わりはしますけど……」
雨空が、えぇー……、と言わんばかりの表情をしている。一度は思うことじゃねえのか。だって雷使えそうじゃん……。
こほん、と咳払いをして、話題を戻す。
「とにかく、クリスマスイブはチキンと相場が決まっている」
「初耳ですけど!? ……まあ、異論はないです。むしろ賛成です」
「よし、じゃあ両方買って帰るぞ!」
「はい!」
そんなわけで、俺たちも大学生らしい……か、どうかはわからないが、クリスマスを堪能すべく、買い物へと向かった。
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