第18章 12月24日
第1話 悪意渦巻くクリスマスイブ
12月24日。
この日がなんの日か、と問われて答えられない現代人は、ほとんどいないと思う。
クリスマスイブだ。
そう、クリスマスイブにも関わらず。
「大学があるの、おかしくないか?」
「おかしくはないですよ。……その気持ちはわかりますけれど」
俺たちは、講義に出るべく大学へと向かっている。
近づくにつれ、少しずつ視界に入る大学生は増えていくのだが、普段よりも少ない。それも、明らかに、だ。
「ほとんどの学生が来ないってわかってるのになんで講義するんだろうな……」
「謎ですよね……。クリスマスイブって、高校生は休みでしたよね?」
「休みだったな。小学生も中学生も休みだ」
「1番人の集まりが悪そうな大学生だけ、なぜ講義が……?」
「謎だよなあ」
はあ、とそろってため息を吐く。
大学生には、自主休講という素晴らしい方法で講義を休む……ではなく、なくすことが出来るのだが、今日はそういうわけにもいかない。
「わざわざクリスマスイブにテストがある講義も謎だよなあ」
「課題提出を今日だけに限定している講義も謎ですね」
やれこのテストに出席しなければ単位はありませんだの、やれこの日以外に提出は受け付けませんし出さなければ単位はありませんだの、教授は学生に恨みでもあるのか?
「教授はわたしたちがクリスマスを楽しむことが気にくわないんですかね?」
「……日頃、講義を聞いてない奴に対する鬱憤かもなあ」
「あぁ……」
信号に引っかかり、ふたりで空を見上げる。
俺たちの気分と裏腹に、空は綺麗な青だった。
「「憂鬱」」
ちらりと見えた雨空の瞳は、珍しく光がなかった。
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