第5話 繋いだ手はそのままで
雰囲気に乗せられて手を繋いでしまったが、それはある意味で正解だった、と会場に着いてから思うことになった。
この人混みでは一度見失うと再開は困難だろう。
「す、すごい人ですね……」
「だな……。さて、まずは反対側まで突っ切って行くか」
この祭りは、車通りの少ない大通りを封鎖して行われる。道の左右に出店が出され、道の突き当たりにある広場では、神輿が担がれたり踊りが行われていたりと各種イベントが開催される。
「え? 通るだけですか?」
不思議そうにこちらを見上げる雨空。普段とは違い、手が繋がれているせいでほんの少しだけ距離が近い。必然的に、上目遣いになるわけで。
……こいつ、可愛いな。
ドキリ、としながらも、平静を装って説明をする。
「一回反対まで行く間に、どんな店があるか、とかを見るんだよ。それで、戻ってくるときに気になったものを買うってわけだ。」
「……なるほど、出店の下見みたいなものですね」
「そういうことだ。準備はいいか?」
「はい!」
普段よりもテンション高めの返事と共に、きゅっ、と繋がれた手が優しく握られる。
俺は、それを軽く握り返して──
「じゃ、行くぞ」
祭り会場へと一歩踏み出した。
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