第4話 お祭りトーク

親父がカエル捕獲にハマった話を筆頭に、帰省中にあった出来事を話している間に、数時間が経った。


祭りの時間まではあと30分といったところだ。


「いい時間だし、そろそろ行くか」


「そうですね、ちょっと準備するので待っててください」


「おう」


男の俺にはよく分からないが、女の子は支度に準備がかかるものらしい。


暇つぶしにスマホをぺちぺちと叩いていると、10分ほどで雨空の準備は終わり、祭りへと向かうことになった。


「わたし、地元以外のお祭りに行くの初めてです」


「そうなのか? ……よく考えてみれば俺も地元か親の実家の祭りしか行ったことなかったなあ」


「先輩の地元のお祭りってどんな感じでした?」


「うーん……まあ、小規模の祭りだな。団地の公園が2つあったんだが、その両方に出店が10個ずつ出てたって感じ」


そう言うと、雨空は驚いた顔をした後、遠い目をする。


「十分おっきいお祭りじゃないですか。わたしの地元なんて公園に出店が5個くらいでしたよ」


「5個って……焼きそば、たこ焼き、かき氷、スーパーボールすくい、くじ、くらいしかないんじゃないのか?」


それを聞いた雨空は、さらに遠くを見つめはじめる。


「いえ……焼きそば、たこ焼き、かき氷、まではあってますけど、残りは飲み物とたこせんです。遊ぶものなんてありませんよ……」


「それ……楽しいのか?」


「楽しくないです。だから、おっきいお祭りが楽しみなんですよ」


そう言いながら急激に遠くを見ていた瞳を輝かせはじめる雨空に、つい笑いが漏れる。


「あ、なんで笑うんですか」


ぷくり、と小さく頬を膨らませる雨空に、すまん、と謝ってから、


「じゃあ、せっかくだから楽しむとしようぜ」


そう言って、手を差し出す。


すると、雨空は、ぽかん、とした後、すぐに、


「はい!」


その手を握ってきた。


……なんで俺、手を差し出したんだろうか……。


普段はこんなことをしないだけに、恥ずかしさもあって、顔を逸らす。視界の端に映る雨空は、少し顔を赤く染めながらも嬉しそうに笑っていた。


どうやら俺は、祭りに浮かれているらしい。雰囲気ってのは恐ろしいな、と思った。

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