第3話 勝負あり

「なにこれ……」


場所は変わって12階まであるマンションの5階。エレベーターから降りたところで、俺はそう呟いていた。


まず、降りた正面に案内がない。


どころか、目の前にある光景が、よくわからなかった。


「なぜこんな意味不明な設計に!?」


上から見た形状で言うと、六角形だ。そこは、元々外から見たときに、不思議な形をしているなあと思っていたので、なんとなくはわかっていた。


しかし、真ん中だ。六角形に一本対角線を引く形で、道がある。

どうやら、その対角線上にも部屋があるらしい。


そして、六角形の辺にも部屋がある。

しかも、どの線上にも左右に部屋があるのだ。


「ちなみに先輩、この階だけで部屋は全部で46部屋あります。並びがわからないと無理だと思いますよ」


「……いや、待て。46部屋ということは、なんとなくの検討がつけられる……はずだ。部屋番号は?」


「537です」


「なるほど、つまりは……」


46のうちの37。ということは、後半のほうにあるはずだ。

ならば。


「ほとんどのマンションは部屋を左から割り振るから……よし、右側だ」


そう思い、一歩踏み出した俺の袖を、ちょこん、と雨空が掴み


「先輩、間違いです」


あっさりと間違いを指摘した。

廊下は吹き抜けの廊下には、荒れ狂う風と雨が、これでもかと吹き込んでいた。

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