第3話 インスタント・ライフ

「では先輩、適度な量のカップ麺を入れることを許可します」


「なんで俺のインスタントライフはお前に管理されてんの?」


「それだと即席人生ですよ。中身すかすかですね」


「うるせえ意味くらいわかってるよ」


そう言いつつ、俺はカップ麺をひと通り確認。


まずはやはりラーメンからだ。お気に入りのシリーズであるカップ麺の醤油、塩を2つずつカゴへと入れる。


お次は新商品。とんこつ醤油ラーメンをカゴへ。


「お? 油そばのインスタントも出たのか」


油そばのカップ麺は初めて見た。これは気になる。インスタントの油そばがどれほどのものか、食って確認してみなければ。


そして次はうどんだ。やはり某有名インスタントうどんは外せない。これ、麺が独特で美味いんだよなあ。とりあえず、3つ入れておこう。


最後は焼きそばだ。ソース焼きそばに塩焼きそば。それぞれ手にとって、大切なことを確認する。粉末か液体か。俺は液体派なのだ。液体ソースの焼きそばをそれぞれ2つずつカゴへと入れ──ようとして、手を掴まれた。


「先輩、わたし、適度にって言いましたよね?」


掴んでいるのは、もちろん雨空だ。……なぜか、恐ろしいオーラを発しているが。


「え、いやそんなに入れてな」


「この量が、ですか?」


改めて、確認してみる。


13個だ。


「……普通だな」


「普通じゃないですよ! 先輩、インスタントがあればあるだけ食べるんですから! この量はダメです!」


「ええ!? いや普通にこれくらいは一人暮らし大学生の家にはあるだろ!?」


「あーりーまーせーんー! 5個くらいで十分です!」


そう言いながら、雨空はカゴから複数個入れたものを棚へと戻していく。


「いいですか、先輩。別に買うのは悪いとも言いませんし食べるのもダメとは言いません。たしかに美味しいですからね。けど、です。インスタントしか食べないのはダメです。身体、本当に壊しますよ」


「……わかったよ、悪かった」


別に何も悪いことはしていないが、なんとなく謝ってしまった。

本気で心配してくれていることがわかったせいかもしれない。


それに、別に横暴なわけでもない。5つなんて言いながら、棚に戻したのは被っていた分だけで、まだ7つカゴには入ったままだ。


「……まあ、その、なんだ。最近、なるべく食わないようにはしてるんだ」


「知ってますよ。そうじゃなかったらお米の減るペースが上がってたり、冷蔵庫の食材が減ってたりすることもしませんし」


「そんなとこから気付いてたのか」


「だってわたし、先輩の冷蔵庫の食料事情は把握してますから」


「それもそうだな……」


家主より冷蔵庫を知り尽くしてるの、やっぱりおかしいな……。


そうこうしている間に、雨空は棚へとカップ麺を戻し終わるだけでなく、自分が買う分を入れ終わっていた。

そのうどんのカップ麺、さっき棚に戻してなかったか? また入れるならなんで一回戻した?


「さて、それじゃあこれくらいにして、そろそろレジに行きましょう」


「あ、ちょっと待ってくれ。飲み物とアイス買って帰ろう。炭酸が欲しい」


「いいですね。わたしも買います」


カートを押して、飲み物コーナーでコーラを、アイスコーナーでモナカアイスをカゴへと入れて、レジへと向かう。


「……結構買ったな」


「まあ、備蓄ですから」


レジで金を支払い、袋へと放り込んでいく。


「量はあるけど重くはないって感じか」


「ですね。さて、アイスが溶けちゃいますし、早めに帰りましょう」


「だな」


そう言って、俺は両手に、雨空は片手にそれぞれレジ袋を下げて、俺のアパートへと戻る。

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