第3話
本を借りた日から、ほぼ毎日本を読む日が始まった。
お兄ちゃんが持っていたのは、冒険記や神話、伝説をまとめた本とかが多かった。
相変わらず、両親は喧嘩を何度もしているけど、それにももうなれてきた。
わたしが五歳になった頃からは、お兄ちゃんが家の近くにある平原に連れていってもらうことが何度かあった。
あそこには他の家の子供もたくさんいて、家にいるより楽しみがある。親には内緒で行っているので、早く帰らなきゃいけないけれども、たまに体を動かしにいっている。
お兄ちゃんは身体能力が高いらしく、長い間走っていることが多い。
平原の子供たちと鬼ごっこをやると、全然捕まることがないくらいだ。
妹のわたしとしても鼻が高い。
まあ、私はそんなに早くないけど。
鬼ごっこに入ったらすぐに鬼に捕まっちゃうけど。
ああ、子供についてたげど、まだ管理者の言っていた勇者には会えていないと思う。能力が高いだろうから、噂でも流れてきそうなものだけど。。
と考えていたら、流れてきた。
わたしが住んでいる場所は、そこそこの人口でそこそこの広さ、そこそこの栄え方をしているそこそこの町だ。
町に大体の施設が揃っている。娯楽は少ない、というかほぼない。
あるのは食品店各種、鍛冶屋に武器防具販売店、飲食店がいくつか。
あと、雑貨屋と古本屋。
それ以外は行商の人や吟遊詩人の人が一週間に一度くらいのペースで、この町に寄っていく。
その、吟遊詩人の人が、軽快なリズムにのせて吟ったのだ。
――黒龍の、声響く。相対するは、幼き人の子。青き炎を身に纏い、白き靴で、地を滑る。
手を振れば、黒龍の身を青く包み、地を蹴れば、黒龍の全てを避ける。
一際強き光こそ、黒龍すら討つ陽光の一撃。
彼の者、後に勇者と呼ばれる者。多大な知識をその身に宿し、慈悲なる心で身を尽くす。――
こんな感じの吟。つまるところ、魔法タイプかな? 青い炎、白い靴、火と風かな。あとは光か。
んあ、そういえばだけど、昔はできなかった魔力の把握、いつの間にか出来るようになった。
見えないけど、感じとることができる。第六感みたいな。
色々試してるけど、魔力は触れない。あらゆる現象を起こすための過程を、魔力ですっ飛ばす感じだと思う。
でも、魔力は物にはならないみたい。いや、例外はあるけど。
水にはなる。純水。真水。不純物ゼロ。
でも、野菜にはならなかった。
元素なら出来る、んだと思う。
こればかりは、本当かの確証がないし、やったことによって周囲にどんな影響があるのか分からないから、放置。
たぶん、わたしじゃなくて勇者がやってくれると思う。
そうだ、基本的なわたしの方針だてだけど、まず目立たない。でも、勇者と同じパーティーになれるくらいの実力はほしい。
勇者は確実に、学園に入るだろうから、今のうちに魔法の練習をしておくのも良いかもしれない。
結局、ステータスを見ることができなかったから、何ができるのかは手探りで探っていくしかないんだけども。。
「フィーネ、どうした?」
「」ふるふる。
首をふっておく。
今は、お兄ちゃんと一緒に町に買い物にいっている。
両親は喧嘩で忙しいらしく、買い物に行かずに引きこもることが多い。顔も会わせたくないんだろう。
もうすぐ離婚、まではいかなくても別居しそうだな。
「いらっしゃい。今日も買い物?」
「はい。いつものやつ、おねがいします」
「はいよ」
農産物を扱っているお店には、二人で何度もいっているので、顔を覚えてもらえた。買う物も覚えられている。
「ありがとう」
「気を付けてね」
お兄ちゃんが芋と葉っぱの入った篭をもらって、硬貨を渡してお店から離れた。
以前お金の価値について聞いたけれども、まだ早いと言われて教えてもらえていない。
それでも、買い物を見ていて何となくだけどわかってきた。
普段使われるのは銅貨と銀貨。滅多に使われないのは金貨。いつもこの三種類しか見ない。
白金は加工することが出来ていないのかもしれない。それか、知らないだけか。
「鍛冶屋寄るけど、先に帰ってるか?」
「ううん」
これは、お兄ちゃんの買い物に行った後に毎回あることで、鍛冶屋に飾られている武器を見に行くのだ。
どう考えても、英雄になれるでしょ。伝説の聖剣とか引き抜いたりして。
飾られている剣は両刃のもので幅も広い。
一番小さなものでもそれなりに重いのが分かる。短剣でも重そうだ。
……鍛えようかな。
ひっそりと、日課に筋トレが加わったのは当たり前の事だった。
半月たっても、10回以上続けることができなかったが。
異世界だけど縛りプレイをしてもいいですか? 凍てつけ @pocarice0228
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