体育祭と、結果の始まり
ファンタジア文庫様より、書籍8/20発売予定です!!!
書影は、ホームページ及び近況ノートにて公開しております!!
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「野郎どもぉぉぉぉぉぉぉっ! ついに、この日が来たぞゴラァァァァァァ!!!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」
大きなかけ声と共に、一年に割り振られたテントから雄叫びが上がる。
目の前の男共は頭に赤いハチマキを巻き、秋に熱気と暑ぐるしさを醸し出す。
────いよいよ迎えた体育祭当日。
開会式が始まる前、俺達赤組の一年グループは、運動の季節をこれでもかというくらいに歓迎し、その始まりを気合いという雄叫びで出迎える。
これが若者のなせる元気だろう。お父さん、ちょと辛い。
「目指すは我々一年赤組による頂点奪取のみ! 赤組の優勝は通過点、我々の目標はその先にこそある!!!」
「「「「「いえっっす!!!!!」」」」」
そして、その一同に熱を与える役割を担うことになった俺。
どうして? という疑問はあるが、どうやら一学年の実行委員にこういうことをしてくれる人材がいなかったらしい。
それで、何か白羽の矢がたったのだ。
初めはめんどくさいと思っていた盛り上げ役も、自分で言うのもなんだが、様になっていると思う。
きっと体育祭テンションが後押ししてくれたからだろう。
「敵は藤堂深雪率いる一年白組! 奴は男子相手ならラフプレーをも厭わない戦乙女だ!!! そんな相手に、我々が負けることなど許されない!」
「「「「「然り!!!!!」」」」」
「立ちはだかる敵は全てなぎ倒せ! 一年白組だけでなく、白組全体、赤組の他学年だろうと構うな! 前へ進め!」
「「「「「いえっっすマム!!!!!」」」」」
「己が姿を女に見せろ! 気高き己を! 誇りを掲げた我らを! その勇姿を! 見せるだけ見せつけて好感度を上げていくぞゴラァァァァァァァァァ!!!」
「「「「「シャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」」」」」
始まっていないにもかかわらず、会場の熱気(一年赤組男子)は最高潮。
同学年の女子達から白い目で見られ、他学年の生徒達からは奇異な視線を浴びているように感じるが、それでも俺達のやる気は収まらなかった。
「ふぅ……これでしばらくはモチベはいい感じだろう」
「やってやるぜ!」「これで俺もモテ男の仲間入りだ!」「告白される準備でもするぜひゃっはー!」などという声から離れ、割り当てられたテントの隅っこに移動する。
何故か集団から離れたのにもかかわらず、女子達からの視線が痛いような気がする。
……気のせいか。だって、おかしいのはあいつらだもん。
「お、お疲れ様です如月さん……」
「お疲れ……如月くん」
そんなことを思っていると、不意に横から声をかけられる。
「おう、ありがと」
「それで、今のなんだったの……?」
今のというのは……さっきのやつだろうか?
「いや、ただ赤組の勝利のためにやる気を上げさせただけだが?」
「そ、そうなんだ……」
どうしてそんなに引き気味な様子を見せるのだろうか?
別に問題はないだろう? 女子にいいところを見せたいという男子の欲を駆り立てモチベに繋げる────我ながらいい指揮だったと思う。
「あの、如月さん」
「ん?」
「深雪さんから「いい度胸じゃない……殺すわ、頑張りましょう」って伝言をもらったんですけど……」
どうしよう、さっきの指揮が敵を煽るだけの行為になってしまった。
いや、煽っていいんだけどさ……殺すわ、頑張りましょうって何よ? 普通、負けないわとかじゃないの?
「で、ですが! これで皆さん盛り上がることができましたっ! 如月さんのお仕事大成功です!」
「……そうだな」
盛り上がったのは嬉しいけど殺されないかという不安が湧き上がってきてしまった。
なんとも嬉しくない達成感だ。
「そうだね! この勢いのまま白組に買っちゃおー!」
「そうですね! お役には立てないかもしれましれませんが、私も頑張りますっ!」
神無月が拳を突き上げて気合いを入れる。
彼女達のたわわな二つの丘が体操服という神秘の衣によって強調されていてげふんふん。
(まぁ、でも……楽しそうなら何よりだ)
体育祭という大きなイベントは、学生にとっては貴重なものだ。
普段できなかったようなことで一喜一憂し、関係を深めながら思い出を作っていく。
それが叶いそうで、本人達も楽しそうにしてくれて……嬉しく思ってしまった。
他ならぬ二人だからこそ────そう思ってしまったのだと思う。
だから────
「なぁ、二人共……」
俺は盛り上がりを見せる二人に声をかける。
「どうしたの、如月くん?」
「どうかされましたか、如月さん?」
二人が……待たせてしまった二人が、こちらを向いてくれた。
「この体育終わったら……少し、時間をもらえないか?」
「いいですけど……何か、あるんですか?」
「いや、その……この前の────」
向いてくれたからこそ、しっかりと口にしなければならない。
問うた問われたから関係なく……俺は、もらった側なのだから。
「この前の、二人に対する答えを……出させてほしい」
結果を求めるな。
その過程にこそ意味がある。
だからこそ、結果を求めるまでの過程を踏め。
「……はい」
「……分かった」
────俺は、俺が出した答えを口にしろ。
結果は、俺自身が出す。
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