揺れている……揺れているぞジョジョ!
夏の日差しが出始めた6月の下旬。
日差しは徐々に強くなっていき、たまに長袖が熱く感じるこの頃。
我が校の体育の授業ではほとんどの人がジャージを脱ぎ、半そで短パンになっていた。
うん、いいよね半そで短パン!
女の子の普段は見れない艶やかな肌が目立つ、太ももや二の腕が見れるんだからさ!
あ、決して変態とかじゃないぞ?思春期男子なら当然の反応だと思うんだ。
いやぁ~、最近コメディーパートがなくてうずうずしちゃってさ~。
お兄さん、ちょっと張り切って男の子らしい反応してみました♪
なんて、気持ち悪い俺の話は置いておいて、そろそろ真面目に話をしようじゃないか。作者さんも、そろそろ真面目に書いてくださいね?
というわけで、現在体育の授業。
うちの学校ではクラスごとの体育ではなく、他クラスと合同で授業を行っている。
別に、固定のクラスと一緒というわけではなく、毎回ランダム。
まぁ、そのお相手のクラスは一週間くらい前から告知があるので、ドキドキワクワクみたいな気持ちは一切起こらない。
もちろん、他クラスと一緒と言っても男女は別。
同じグランドに足を立てていても、遠目からしか女子を拝めることができない。
ちなみに、男子の種目は走り高跳び。
高い場所へと設置された棒に、なんの面白みもなく飛び越えるだけ。
……なんてつまらないんだろう。
どうせなら、野球とかサッカーとか、女の子にアピールできる種目がいいよね。
しかし、それは女子とて同じ。
『は~い!じゃあ今から3,000m走始めるわよ!』
『『『え~』』』
教師の掛け声にあちらこちらから女子の不満が飛び交う。
どうやら、今回の女子の種目は長距離走みたいだ。
「……颯太よ。こんな授業のどこに需要があるんだ?」
「ま、まぁ…一応陸上も立派なスポーツだから」
順番待ちをしている俺の言葉に苦笑いを浮かべる我が親友。
イケメンの苦笑いは俺のHPを大きく削ってくる。だ、だれか!俺にヒールを!
『それじゃあ、よーいスタート!』
教師のホイッスルの音に合わせて女子達がトラックに向かって一斉に走り出す。
やる気のないやつ、本気で走る奴。それぞれスタートライン時点で顕著に窺えた。
……本当に、陸上が好きな人には申し訳ないが、こんなつまらないもの(※あくまで個人的な感想です)のどこに需要が——————おぉっ!?
「颯太颯太!陸上って素晴らしいね!僕、陸上好きになっちゃったよ!」
「すごい掌返しで口調も変わってるけど、どうしたの?」
「あれを見ろ我が親友!今、この瞬間、陸上の素晴らしさを体現しているぞ!」
俺は颯太の顔を無理矢理動かし、指さす方向に向ける。
そこには、今走り始めた女子の姿があった。
「うぉぉぉ……揺れてるっ!揺れてるぞぉぉぉ!!!」
「だれか!衛生兵を呼んでくれ!竹内が鼻血で倒れた!」
「あぁ…あの揺れから察するにCかE……(ブシャァァァァァァッ!)
「たけうちぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
一生懸命走っている女子も、そうでない女子も等しく揺れる。
今見てる光景は、女子の胸部にある男の夢。それがこれでもかと言うくらいに揺れていた。
揺れている……揺れているぞジョジョ!!!
それを見て走り幅跳び待機中の男子達は一斉に歓喜と血の海で染まり切っていた。
あぁ…分かるぞ皆の衆……陸上って、素晴らしいね!
陸上、需要あった!特に男子に!
それにしても、竹内君。後でその見ただけで分かる胸の測り方教えてくれない?おじさん興味がある。
「まぁ、真中が陸上に目覚めた理由がアレということは置いておいて—————」
「おい」
「みんな、意外に早いね。もう少し遅いと思っていたよ」
俺は待機場所で先頭集団を見る。
確かに、思っていたよりかは速いスピードで走っているな……。
先頭集団には戦乙女。
その顔色は何一つ変わらず、涼しい顔でトップを走っていた。
あいつ、運動もできたのかよ……マジぱねぇっす。
そして、それに続くは黒髪を綺麗になびかせながら走る少女。
「……神無月も意外に速いんだな」
そう、なんと意外なことに我が初恋手である神無月が藤堂の後ろを走っていたのだ。
藤堂とは違い、胸部には大きな山が————ごほんっ!
「そうだね……真中は知らなかったの?」
「中学は一回もクラス一緒じゃなかったからな」
「初恋相手のことは調べているものだと思っていたよ」
「馬鹿言え、あの時は自分を磨くのに精一杯だったわ」
そう、今にして思えば彼女の特技とかあまり知らない。
好みとか身長とか体重とかしか知らな————ストーカーじゃないっすよ?
先頭集団がトラックを回り、待機場所の横を通り過ぎようとしている。
そして、俺が
「ッ!?」
横を通る瞬間、何故か神無月が俺の方に向かってウインクを飛ばしてきた。
余裕があるなー、何てものは考えられなかった。
それ以上に、俺にしたのか?という疑問と、一気に跳ね上がった心臓が俺の意識を持っていった。
「速いね、深雪は」
そんな俺の様子に気付かない颯太は、藤堂を見てそんな言葉を漏らした。
流石、彼女以外は視界外ってことですか。
俺は颯太にこんな気持ちを悟られないように気持ちを切り替える。
「そういえば、柊はどこに……?」
周囲を見渡す。
同じクラスだから一緒に走っているはずで、トラックのどこかにいるはずなんだが……。
中堅走にもいない。
となれば————
「……あ、いたわ」
俺が見つけた場所はなんと一番後ろ。
そこで一生懸命に走っているものの、全くスピードが出ていない聖女様の姿があった。
あいつ、運動できないんだな……。
けど、その走る姿は一生懸命で、どこか応援したく——————
「悪い颯太、先生を呼んできてくれ」
「ん?急にどうし——————」
颯太の言葉を最後まで聞かず、俺は走り出す。
目指すは柊のいる場所。
多分、これ以上は限界だ。
柊の顔はかなりしんどそうで、今にでも倒れだしそうだった。
一番後ろだからなのか、誰も柊の様子に気付かない。
柊の体がふらふらと大きく横に揺れる。
そして、その体は支える力を失い、思いっきり地面に————
「っと、あぶねぇ……ギリギリセーフじゃねぇか」
倒れる寸前、俺は柊の体を抱きとめた。
柔らかい感触なのだが、体が以上に熱い。
整った可愛らしい顔も青白くなっており、息も激しく乱れていた。
「あ…れ……如月さん…?」
「喋るな、柊。大人しくしてろ」
意識が朦朧としている中、柊は喋ろうとしたが俺はそれを制す。
多分、これは熱中症。
最近日差しも強くなってきたから、急な気温の変化に体がついていかなかったのだろう。それに、こいつ……多分、水分をあまり摂ってないな?
「だ、大丈夫か柊!?」
そこに、先生が慌てて駆け付けてきた。
横に颯太がいることから、きっと無事に呼んできてくれたのだろう。
周りの生徒も何事かと動く体を止め、こちらに集まってきた。
「先生、多分柊は熱中症だと思いますので、このまま保健室に運んできます」
「お、おぅ……頼むぞ」
颯太には悪いが、先生を呼んできてもらった意味がなくなっちまったな……。
しかし、いち早く先生に伝えれたので良しとしよう。
早く、柊を涼しい保健室で横にして休ませてあげたい。
「あ、ありがとう……ございます……」
「気にすんな」
俺は抱き留めた体を背負うと、そのまま揺らさないように保健室へと向かった。
……全く、気分が悪いなら正直に言えばいいものを。
これは帰って説教しないといけないな。
「どういうこと……!?」
その光景を見た少女が一人、唇を噛みながら苛立っていた。
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