閑話〜恋とは〜

『生まれて初めて恋をする』と書いて初恋と読む。


 恋に落ちる瞬間は人それぞれで、唐突に訪れることもあれば、徐々に自覚していくパターンがある。

 俺は圧倒的に前者だ。


 人は初めての感情には誰しも戸惑うものだ。

 生まれて初めて感じる痛みに不安を覚えたり、初めて見つけた小惑星を見て困惑したり興奮したり—————平静でいられる人間は少ないと思う。


 それは恋とて同じ。

 初めて抱くこの胸の高鳴りや、不安や嫉妬。それに一緒に過ごしているだけで安心したり、幸せに感じたりする。


 俺が初めて恋を自覚した時もそうだった。

 彼女のことを思い出す度に胸が高鳴ったり、話しているだけで嬉しく感じたり、他の男の人と話しているだけでモヤモヤした気分になる。


 そして、恋というものに振り回されて、いつもの自分通りに振る舞えなくなったり、物事が上手くまとまらない。


 けど、この恋という感情は決して悪いものでは無いと思う。

 この感情を知ったことによって確実に俺は充実した日々を送れていたから。



 —————しかし、この充実した日々はずっと続くものなのだろうか?



 永遠に続くものなんてない。

 唯一不変という言葉は現実には存在しない。


 何事も、時間が経てば変わっていくものだ。




 ……俺の初恋がいい例なんだと思う。


 彼女を見た時に初めて抱いた感情。

 けど、この気持ちが続いたのは結局は1年だけで、彼女が付き合っていると知った時、この感情は悲しみとショックによって青く濁ってしまった。


 それからは、ただただ未練がましくあの赤かった恋に縋っていくだけ。

 傍から見れば、女々しい以外の何物でもなかっただろう。


 そんな、青く濁った俺の初恋はそれから1年は続いた。





 しかし、今となってはその気持ちは違う色に変わっている。


 彼女と出会ったことで徐々に濁りが消え、綺麗な色に変わっていく。

 些細なきっかけではあった。けど、それは俺の人生を変える大きなものだったと思う。


 僅かな付着した色が、次第に大きくなり、今では俺の心の半分を満たしている。


 彼女と関わっていくうちに、初めて抱いた感情から、再び抱いた感情へと変わっていった。


 今の気持ちは悪くない。

 濁っていた時の気持ちに比べたら、数千倍も幸せな気持ちになっている。







 だがここで1つ問題がある。


 綺麗になりつつあると言っても、完全に色が変わったわけじゃない。




 もし、再び赤い感情が色を戻したら、今の色はどうなるのだろうか?




 混ざりあって消えていくのか?

 それとも、赤い色を塗りつぶしてしまうのか?


 ……今のこの気持ちは好きだ。


 ありふれた日常に光を与えてくれた彼女といる時間は、俺にとって幸せに感じる。


 変わりたくない、変わって欲しくない。


 そう思いつつも、過去の色は消え去ることは出来ない。

 それは、初めて抱いた瞬間から切っても切れない色だから。






 見て見ぬ振りをしてもいい。

 すぐに答えなんて出さなくても、大きな被害は転がり込んでこないから。




 けど、いつかは決めないといけないのだろう。

 宙ぶらりんになった感情は、ゆくゆくは自分を傷つけていく。

 答えは、必然的に決めなくてはいけないのだから。









 さて、皆さんに質問です。



 答えを出さなくてはいけない時—————




 初めて付いた色に戻すか



 後に付いた色にするか





 皆さんはどちらを選びますか?







 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ※作者からのコメント



 申し訳ございませんm(_ _)m

 前話の最後を変更致しました。



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