雑草が恋した黄色い薔薇

チドリ正明

雑草が恋した黄色い薔薇

 僕は突然恋に落ちた。じわじわなんてものではなく本当に突然だ。大学の正門で彼女の姿を見たときに一目惚れして見惚れてしまった。大きな目、小さな顔に白い肌、スラッとした体躯は一流芸能人を彷彿とさせた。

 気が弱く内気な僕はまっすぐ目を見ることもできない。彼女にアクション起こす勇気もない。



 彼女を知っているという同じ学部の男友達に詳しく聞いたところ、彼女は大人びて見えたが、僕らとは別の学部だけど同学年らしい。



 彼女について根掘り葉掘り聞く僕に

どうしてそんなに知りたいんだ?

 友達にそう言われ、ありのままの僕の感情を友達に話した。

 友達は『お前にあの子は釣り合わない。』

そう言って話を断ち切った。

 


いままで付き合ったこともなければ、人を好きになったこともない。


ファッションや流行も疎く、これといって特徴もない。いうなら無能。


 それに比べて、彼女はおしゃれで友達が多くて、英語も話せてるなんでもできる子で、いわば高嶺の花である。


 他にも女はいるぞ?と友達に言われたけど、恋は盲目とはこのことで彼女以外の女性なんて視界に入らなくなっていた。


雑草の僕でも恋をしていいですか。

 












































僕ははじめて恋に落ちた。












☆ $ € %




 あの日から毎日がときめいていた。ずっと見ていた。目で追っていた。横顔が綺麗だ。


 まるで美しい薔薇を見ているようだった。


 趣味はなんだろう?

 彼氏はいるのかな?

 今どこでなにしてるのかな?


 例の友達にもあれからしつこく彼女について聞いていた。

 ある日、折れた友達が僕を彼女に紹介してやると言ってくれた。


 こんな僕でもチャンスをもらえた。緊張するけど頑張ろう。


 ちゃんと話せるかな。目は見れるかな。

いや、まずはメールから始めてみよう。



 にっこり笑う顔文字をつけたり、疑問文で話を繋げたり、恋愛初心者な僕なりに頑張っていた。些細な返信で心が踊り、そのメールを何度も何度も読み返していた。




 メールを始めて少したった頃、僕は彼女を遊びに誘った。ボタンを押すのはいつもと同じ、なのにここで勇気が出ない。一世一代の思いをかけてメールを送り、彼女からの返信を待った。あれ?なにしてるのかな、いつもの返信より時間かかってる。なんかあったのかな。なんて深読みをしたり、そうこうするうちに彼女から返信が来た。




 『いいよ いこう♡』




 僕は飛び跳ね喜び、はじめてのデートのプランを彼女とメールしながらじっくり考えた。






☆☆☆☆




 デートの日までにダサい自分を変えることに決めた。トレンド雑誌を見てコーディネートし、デート当日をしっかりイメージ、彼女に楽しんでもらえるように話題もたくさん考えた。




 デート当日になり待ち合わせ時間5分前到着。どうやら僕が先に着いたらしい。

 彼女のことを緊張しながらもじもじ待つこと35分。彼女は現れた。


 『服似合ってるよ。』って雑誌のセリフに載ってたセリフを僕がぎこちなくいうと、笑顔で彼女は微笑んだ。




 計画通り映画館に行き、隣をチラチラ横目で見ちゃって映画には集中できなかったけど、彼女と話すときは同じタイミングで笑い、ポップコーンも時間も共有することができた。隣に座れていただけで幸せだった。




 終わった後はレストランで2人で食事をし、好き嫌いとか些細な会話で盛り上がった。



 時間はあっという間に過ぎ、お別れの時間。『またね』と笑い僕とは逆方向の電車に乗り込む彼女を見送り、僕も帰路についた。


 帰宅途中で待ちきれずにメールをした。


 『今日は楽しかった!ありがとう!』


 馬鹿で単純な僕はそれだけで浮かれた。























 こんな日々が続けばいいな。











####




 あれから何度か彼女とデートもしたし、その度に心は和んだ。


 バイトの時も、家族といる時も、友達と遊んでいる時も、彼女のことが頭から離れなくなっていた。



なんでだろう。最近息が苦しい。


胸のあたりがチクチクしている。


 どうしようもなく早く好きって伝えたい。

 

 あの頃はメールを送るくらいで戸惑っていたチキンな僕だったけど、今回は彼女に直接想いをぶつけることにした。


 振られたり先のことは恐れない。

 だって、初めからなしえなかった恋だから。


 彼女を呼び出し、シチュエーションもタイミングもクソもなく、想いの丈を彼女に素直にぶつけた。















 『好きです。付き合ってください』


 ぶっきらぼうにセリフを吐いて、彼女に向かって頭を下げた。



 この時間は、多分ほんの数十秒だったが、永遠に感じられた。




彼女は間を開けて口を開いた。





































 『ごめんなさい。』






























 この初恋を僕はこれからも引きずっていくのだろう。

 彼女の顔は引きつっていた。


 哀れみのようなものも含まれているのだろう。


 

 あんなに遊んで、楽しい時間を一緒に過ごしたのにあんまりだった。



 声こそないけどはっきり聞こえた。




 『お門違いじゃないの?』












☆☆☆☆


 僕の初恋は儚く散った。

 

 みんなが言う。薔薇のあの子は高嶺の花

 俺らは雑草。名前はない。


 彼女からしたら僕も有象無象の1人だったのだろうか。




































 叶わなかった恋だったけど





















 こんな雑草とたくさん遊んでくれて






 
























 たくさんの楽しい時間をありがとう。




 

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