第4話目標
「幕府の台所役人ですか?
しかし私は女です」
「上役人は男、それも旗本や御家人に限られている。
しかし下役は別だ。
身分は問われない」
「しかし、性別は問われるのではありませんか?」
「ふむ。
そうか、そうだな。
これは迂闊であったな。
ならば大奥を目指せ。
世をはかなんで一生独身でいるというのなら、寺も大奥も同じだ。
寺では金にならんが、大奥なら立身出世が目指せる。
美幸が支援してくれれば、深月たちの持参金で頭を痛める事もない」
「もう!
私が失恋して苦しんでいるというのに、父上はなにを考えておられるのですか?」
「大切な美幸の事に決まっているではないか。
寺になど入ったら、還俗するのが難しい。
だが大奥なら、同心程度の娘では、大した役にはつけん。
お目見え以下ならいつでも辞められる。
二三年したら、大和屋与兵衛の娘が真司郎殿に愛想をつかしているかもしれん。
病で死んでいるかもしれん。
世の中なにがあるか分からんからな」
「……本気で言っておられるのですか?」
「ひとめ惚れ傍惚れがあるように、百年の恋が覚める事もある。
だがこれは美幸も同じだぞ。
真司郎殿が家を護ろうとしてのは武家としては立派な事だ。
父親の医薬のために結婚するのも孝行者よ。
だがな、そのために婚約者を捨てたのだ。
美幸を捨てたのだ。
夫としては酷薄としか言いようがない。
美幸の父親としては、そんな男に嫁にやらずすんでほっとしておる。
この通りだ。
あのような薄情な男と見抜けず、婚約者に選んですまなかった。
許してくれ」
お先手組同心として忠勤に励み、剣と槍の鍛錬を続ける厳格な長太郎が、自分の娘に手をついて謝ったのだ。
美幸は激しく狼狽した。
「お手をお上げください父上。
私が間違っておりました。
そうですね。
私は真司郎様に捨てられたのですね。
家や父親よりも下に見られたのですね。
分かりました。
私は真司郎様を見返してみせます」
「おお、そうか、分かってくれたか」
「はい。
私は大奥を目指します。
大奥で料理人を目指します」
「大奥役職と給与・お目見え以上」
御年寄 :切米五〇石・合力金六〇両・一〇人扶持。
御客会釈:切米二五石・合力金四〇両・五人扶持
中年寄 :切米二〇石・合力金四〇両・四人扶持
御中臈 :切米一二石・合力金四〇両・四人扶持
御錠口 :切米二〇石・合力金三〇両・五人扶持
御表使 :切米一二石・合力金三〇両・三人扶持
御祐筆 :切米八石 ・合力金二五両・三人扶持
御次 :切米八石 ・合力金二五両・三人扶持
御切手書:切米八石 ・合力金二〇両・二人扶持
御伽坊主:切米八石 ・合力金二〇両・三人扶持
呉服之間:切米八石 ・合力金二〇両・三人扶持
御広座敷:切米五石 ・合力金一五両・二人扶持
「大奥役職と給与・お目見え以下」
御三之間:切米五石 ・合力金一五両・二人扶持
御仲居 :切米五石 ・合力金七両 ・二人扶持
火之番 :切米五石 ・合力金七両 ・二人扶持
御茶之間:切米四石 ・合力金七両 ・二人扶持
御使番 :切米四石 ・合力金四両 ・一人扶持
御半下 :切米四石 ・合力金二両 ・一人扶持
「台所役人」
膳奉行 :役高二〇〇俵・役料二〇〇俵・旗本
台所口石之間番ー舂屋門番人
膳所台所頭:六人・禄高二〇〇石・役料一〇〇俵・御家人。
膳所台所組頭:九名・禄高一〇〇俵・役料四扶持・御家人。
台所衆 :四〇俵二人扶持・身分不問
小間使い :一五俵一五俵一人半扶持
膳所台所組頭ー膳所台所人
膳所小間遣頭—膳所小間遣組頭—膳所小間遣
膳所六尺
御賄頭 :六人・禄高二〇〇石・役料二〇〇俵・旗本。
御賄組頭 :禄高三〇俵・役料一〇〇俵・御家人。
御賄調役 :禄高三〇俵・役料七〇俵・御家人。
御賄吟味役:禄高二〇俵・役料五〇俵二人扶持・御家人。
御台所人 :役料五〇俵・身分不問。
御賄方 :禄高一〇俵・役料二人扶持・身分不問。
台所番 :禄高二〇俵・役料二人扶持・身分不問。
賄組頭ー賄方
-賄六尺頭ー賄六尺
賄調役ー賄吟味役ー賄改役
賄新組頭ー賄新組
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