第9話 練習

「能力測定だ。ではここを出よう」


二人が学習室から出る

「さて、これからトレーニングへ向かおう」

「はい!」

「と、言いたいところだがそろそろ昼食にしよう。君も腹が減っているだろう?」

石神が腹をなでおろす

「そうですね」

鴨山が自身の右手に付けている時計を見ると短い針が12時を回っていた

「食堂へ行こう」

「是非行きたいです!」


「まだ色々教えることができていないが、どうだい?やっていけそうかい?」

二人が廊下を歩きながら話す

「うーん。まあ何とかやっていけそうな気がします」

石神は苦笑して答える



「さて、ここが食堂だ」

「自衛隊の中なのに結構広いですね」

食堂の中は高校であるような学食の室内の様で、白いテーブルに背もたれ付きの椅子が左右に三つずつで一セットとなっており、それが複数ある

入口から5m先には食券機が置いてあり、左端にはウォーターサーバーと食品サンプルが設置されている

「今日は俺のおごりだ。好きに食べてくれ」

「ありがとうございます!何にしようかなー」

石神はウキウキと食品サンプルを見る。そこには定食、丼もの、麺類、パンなどの他に活力付けのプロテインや栄養ドリンクもある


二人が食券を買って席で待つ

「鴨山さんはどうしてこの組織に入ったんですか?」

「ん?THE PEACEの事か」

「はい。一応平和的な組織なんですよね?何か守りたいものとかあるんですか?」

「いや、具体的に何かをという訳ではない。偶然力を手に入れてしまったから皆のために戦っている。それだけだ。君は?」

「まだ明確には…」

少しうつむいてしまう石神


そうこう話していると二人の昼食が完成する掛け声が聞こえたため二人が取りに行く


二人は席に戻って座る

「鴨山さんは何にしたんですか?」

「俺は温そばだ。好物でな」

鴨山のそばはしょうゆベースのスープにそばが入りその上にわかめ、ネギ、小松菜が乗っている

「いいですね、自分は唐揚げ定食です。自分はこれが大好物なんですよ」

石神の定食はお盆の上にご飯、みそ汁、そしてメインディッシュの皿は手前に唐揚げが四つ、奥にはキャベツの千切りとパスタが盛り付けられている


「あむっ、おいしいですねこの唐揚げ。味はしっかりしててサクサクと食感がいいです」

唐揚げの次にご飯をかきこむ

「そうか。そういってもらえるとおごった甲斐がある」


何気ない会話と共に二人は食事を終える


「腹も膨れたことだし行こうか」

「これなら全力でトレーニングに望めそうです」


二人が食堂を後にしてトレーニングに向かう


「着いたぞ。ここがトレーニング場だ」

着いた扉の前にはトレーニング場と書かれている

「では中に入ろう」

そういうと鴨山は扉を開けた

「失礼します」


「うわー、結構広いんですね」

中は体育館のような広さや構造をしており地面に線が引かれたり、端には人型の的がある


「さてと、君に先に言っておきたいことがある」

「なんでしょう?」

「まあわざわざいう事の程でもないのだが、これから君は俺たちの仲間になるからな、呼び方も石神君。ではなくお前や石神と呼び捨てにさせてもらう。ただそれだけだ」

「もちろんですよ、それでお願いします!」

「うむ、ではトレーニングをするぞ石神」

「はい!よろしくお願いします!」

二人は的に向かう


「まずはさっきの木の枝のように火を使うトレーニングをしてもらう」

的の近くに置いてある竹刀を手に取る

「まぁた手まで燃えるんじゃ…」

不安な顔を隠せない石神

「はっはっは!ちゃんと精神集中すれば大丈夫さ」

笑いながら竹刀を石神に渡す

「では波動を出してくれ、手が燃えない程度にな」

「はい。燃えないように燃えないように」

両手で竹刀をまっすぐに持つ


そうすると竹刀の上の方がボッと燃える

「そうだ、いいぞ!そこから徐々に下の方まで伸ばし竹刀全体を燃やしてみよう」

「は、はい」

そう返答すると竹刀に付いている火は導火線のようにじわじわと竹刀を燃やしていく

「おお!すごい集中力だな、だがまだ力が弱い」

ついに火は竹刀全体に回りメラメラと燃える


石神は竹刀を持ったまま両膝をつく

「ハア、ハア、すごい疲れますねこれ」

石神が見つめている竹刀は燃えているが石神が力を緩めたことにより火が徐々に引いていく

「だろう?トレーニングを重ねれば慣れるさ」


「大体分かったか?こういう容量で敵と戦っていくんだ。イメージは掴めてきたはずだ」

「はい。相手も同じ力を使うならば自分も同じ力を使うのが不可欠ですね」

「そうだ。石神には当分これに励んでもらう」

「追いつけるよう頑張ります!」


「では次は銃のトレーニングだ」

「銃ですか、これも同じように燃やすんですか?」

「ああ、そうだ。まず手本を見せる」

鴨山は銃を両手で構えて力を集中する

「これはエアガンで弾はBB弾なんだがよく見ていてくれ フンッ!」

バンッと的へ放った弾丸が着弾し、着弾点から的が燃えて広がる

「!?」

声の無い声を出し石神が驚く

「どうだ?驚いたか?」

「はい。どうやってやったんですか?エアガンなのにあんなに燃えるなんて」

「竹刀と同じさ、弾へ思いを集中するんだ。火の種が弾の中にあるようなイメージで」

「竹刀より遥かに難しそうですね… 自分銃の構造とか分かりませんし」

「そうだな。まあやってみてくれ。口より経験だ。それと銃の勉強もこれからしてもらうぞ」

銃のグリップ側を石神に差し出す


銃のグリップ側を持って受け取り、両手で銃を的へ構える

弾丸に集中、と今度は口ではなく心の中で集中する。

「行け!」

バンッと音を出し放った弾丸は燃えには燃えたがあまり広がらなかった

「あれ?」

「燃えただけすごいさ、俺は最初の内は燃えなかった。これも能力の差だな」

波動の違いのせいかフォローを入れつつも、苦笑いで石神の力をうらやむ

「まあ練習あるのみですかね」

「そうさ。とりあえず石神には竹刀の練習をしてもらう。マスターしたら次は銃だ」

「はい!」


「よし、少し待っててくれ。練習用の竹刀を持ってくる」

鴨山はルーム内にある倉庫の中に入り沢山の竹刀が乗った台車を取り出し、持ってくる

「んな!?」

石神が見た光景は100本程ある竹刀の塊であった

「ではみっちり練習しようか、い・し・が・み・く・ん」

にっこりと笑う

「アハ、アハハハハハ」

今度は石神が苦笑いになってしまう

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