第8話 学習の朝
「では行こう」
「はい」
二人が小会議室を出る
「ところでこれからどこへ行くんですか?やっぱり知識を身に着けるんなら勉強の部屋とかですか?」
「まあそんなところだ」
廊下を歩く二人が会話をしながら目的の部屋へ向かう
「目標であった人物は力を手に入れました。彼はこれから我々に大きな力を貸してくれるでしょう」
「そうか」
野田と基地の司令官のような人物が会話をしている
司令官の容姿はどこにでもありそうな髭を鼻の下から左右に伸ばし口の周りにも髭を生やしている。髪の割合は黒髪より白髪が多くでこは広く、全体的には短髪だ。
着ているものは司令官相応なもので、緑色の自衛隊服を身に着けた上には様々な勲章が付けられている。
「戦いは始まったばかりだ強力な人物は腐る程必要だ。以降の管理は君に一任する」
「ハッ!承知致しました。」
「着いたぞ、ここが石神が学ぶための教室だ」
「ここですか」
石神達が付いた場所はまたまた高校の教室と同じような広さで机と椅子が置いてありその正面には黒板が設置されており、教室の扉には学習室と書いてある
机と椅子の数は普通の教室と比べ数が少なく横一列に3つ、それが3セット置かれていて合計9つの席だ。後ろには複数個机と椅子が重なっており必要な数に応じて出せる仕組みのようだ
鴨山が扉を開け
「入ってくれ。そして前中央の席へ」
「はい」
鴨山が机を指定し石神が入った後に鴨山が後から入る
「さて、では机の中を見てくれ道具一式が入っているはずだ」
「はい」
机の中には一般で使うノートとシャープペンシル、鉛筆、消しゴムが入った筆箱が机の中に入っていた
「準備はいいかな?授業を始める」
そういうと鴨山はチョークを取り出し色々と書き出す
「まず最初に我々は【波動】と呼ばれる体から出る波を放つ。そしてお互いはそれを感じ取ることができる」
「波ですか?そういうものは自分には感じ取れませんが」
「そうだな。ではやってみよう」
というと鴨山は目の前の机の上にある木の枝を手に取った
「よく見ていてくれ。ハッ!」
鴨山の掛け声と共に持っている木の枝がメラメラと燃え出す
「!?」
言葉もなく石神は驚く
上半分が燃えて焦げた木の枝は鴨山の手からサラサラっと落ちていく
「どうだった?」
「正直言って驚きました。木が燃える、というより鴨山さんからきた何かに驚きました」
「フッ、そうだろう?君も感じ取ったな。これが波動だ。」
「まだ信じられませんが、これがそうなんですね」
「このようにして我々は力を使うときにお互いの力を把握できるのだ」
石神は必死にノートをかき込む
「よし。では君もやってみてくれ」
「……… はい?」
2~3秒石神の頭の中が固まる
「練習だ。君の机の中にも木の枝があるはずだ」
石神が机の中の木の枝を取り出す
「これですか?」
「そうだ。ではそれを燃やすイメージを頭の中で巡らせてみろ」
「は、はぁ」
やはりイマイチ理解していないのか返事も曖昧になってしまう
「まあとにかくやってみろ」
「は、はい。では、やってみます」
燃やすイメージ、燃やすイメージだ。と強く想像して石神は木の枝を右手で強く握りしめる
すると木の枝は鴨山の時よりももっと強い勢いで炎が広がる
勢いよく燃えた火は石神の持っている木全体へ広がる
もちろん木全体へ火が広がるわけだから、火は手の中にまで入ってくる
「アチャー!熱い!熱い!」
石神はたまらず勢いよく木を投げる
投げられた木は床に落ちる前に灰となった
右手首を左手で掴みながらやけどした手を見て自分の息を吹きかける
「あちゃー、やっぱり火傷しちゃったな」
「それ先に言ってくれませんかね…?」
呻き声に似たような声が鴨山へ届く
「さて、気を取り直して次のステップに行きたい。」
「無視しないでくださいよ…」
あからさまに無視をした鴨山に石神がまた問いかける
「冗談だ。君の能力を把握したかったんだがな。申し訳ない。ほれ、氷だ」
どこかから取り出した氷を石神へ渡す
「これからは気を付けてください」
少しムスッとした顔で言いながら手を冷やす
「次のステップの前に君に言いたいことがある」
「なんですか?」
「君の波動はとても強い。半端なくな。力を使った時がもちろん強いが使っていない時でも波動をかなり感じる」
「どういう意味ですか?」
「さっきも話したろう?通常は力を使うときに波動が感じられるんだ。でも君の場合は何もしてなくても感じられる。恐らくだが君の力が強すぎるんだ。」
「なるほど。自分の力がですか…」
「さっき君は火傷したろう?力に慣れていないのもそうだが、俺が初めて力を使ったときはあんなに強くなかった」
「そう…ですか…。なんか自分が怖いです」
「そんなことは無いさ。我々は君を歓迎すると言ったろう?」
「はい。よろしくお願いします。」
「では次のステップだが、力を使うときに気を付けてほしい事が二つある」
鴨山は注意事項を黒板に書きだす
①精神的にマイナス方面で弱くなってはいけない。テンションを上げ続けろ
②力を限界まで高めていいが限界を超えてはいけない
「一見①と②が矛盾しているように見えるが文字通りだ。順を追って説明する」
「確かに矛盾してますね」
石神が苦笑いをする
「まず①に関してだ。」
長い棒で①の項目を指す鴨山
「根本的な話をしよう。さっき話した通り我々は力を使うときには想像力が試される。どれくらいの力で火を起こすか、熱くならないようにするか。」
「マイナス面に陥ってしまえば想像面もマイナスになってしまう。『勝てない』『負ける』『倒される』と考えがよぎってしまえば想像もまともにできんのさ」
「そうなった場合どうなるんですか?」
鴨山が図を描きながら
「簡単な話、力が暴走する。君がこうなれたのも想像力や自制心が強いためあの力を手に入れられたのだ。何事も冷静にだ」
「自分が冷静ですか。何か実感湧かないです」
石神が笑いながら頭をかく
「次に②に関してだ。これも①と同じようなものだ」
「なら暴走しないように尽くしたほうがいいんですか?」
「そうだ。シャワーをイメージしてみてくれ」
②のシャワーの図を描く
「シャワーにはお湯を出すための蛇口が付いているだろう?」
「そうですね。捻ることによってお湯の出し加減が変わっていき、沢山お湯を出したり止めたりしますね」
「そうだ。俺たちの力も同じなんだ。想像や自制心がその蛇口の役割をしている」
「かなり分かりやすい説明ですね」
「だろう?ではそのシャワーの蛇口が壊れてしまったらどうなると思う?」
鴨山がチョークを突き付ける
「お湯は止まりません。出続けるのみです」
「その通りだ。俺たちの力もそうなんだ。限界を超えてしまうと蛇口は壊れ①同様、力が暴走する」
シャワーが壊れた図を描く鴨山
「①でも気になりましたが、そうなれば暴走し続けるんですか?」
「いや、力を出して極限まで疲れれば倒れる」
「!? まさか死ぬんですか!?」
少し焦りを見せる石神
「そんなことはない。気絶するだけだ。起きればまた制御しながら力を使える」
「そうですか。良かった」
ほっとする石神
「そして何よりも暴走した力は極めて強くなる。今のところ誰にも制御はできない。だが君のように自制心が強ければもしかしたら…」
鴨山の鋭い目が石神を指す
「過大評価しすぎですよ。そんなことは無いです」
ちょっぴり照れ笑いをする
鴨山もそれに釣られちょっぴり笑う
「果たしてそうかな」
「ではここまで説明したのをまとめていこう」
・精神的にマイナスになった場合と限界を超えた時は力が暴走し倒れるまで力を使い続ける。気絶はするが目を覚ませばまた力を使える
・暴走状態に陥った力は誰にも手が付けられない
「こんなものだな。書けたか?」
「はい。書けました」
「よし、とりあえずの基本学習の内容は以上だ。ノートや鉛筆などは持って帰ってもらってかまわない。あー木の灰はそこの塵取りとほうきで片づけてくれ」
「分かりました。色々教えていただきありがとうございました!」
黒板に書いた文字を消す鴨山と、筆記用具をまとめて灰を片付ける石神
「では次に移ろう」
「次は何をするんですか?」
「君の力がどこまで具現化できるか測る。能力測定だ」
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