第7話 迫る真実

「ようこそ!我が組織【THE PEACE】へ!我々は君を歓迎する!」

石神を除く室内の三人が歓迎の態勢になる。


「えっ、えっと~ これってどういう…」

石神は歓迎のムードに困惑した


困惑している石神に構わず鴨山はこれからやるべきことを色々と話す

「これから君には我が組織の部隊に入って、一緒に戦ってもらう」

「あの~?」

石神に構わずどんどん話す鴨山

「そうそう、まずは皆に挨拶をしてらおうか」

「いや、ですから」

「その前に能力チェックか」

「鴨山さん?」

「いや、でも」

などと鴨山のペースに飲まれる石神


「鴨山っ!!」

野田の声が部屋全体を一喝する

「石神が困惑しているだろう。よく見ろこういうところはお前の悪い癖だ。直せ」

「はっ!すみません。気が付きませんでした。すまん石神君。俺の悪い癖だ」

自分が作るペースで輪を乱してしまった事に気付いたのか謝罪の言葉が石神に送られる

「い、いえ大丈夫ですよ。ただ色々分からないことが起きているので順を追って説明していただけると助かります」

「そうだな。でもその前にこの場にはもう用は無いな、場所を移そう。野田さん小会議室を使用してもよろしいですか?」

「許可しよう。管理課には私から伝えておく。」

「ありがとうございます。では行こう石神君。神田さん応急処置室を使わせていただきありがとうございました。」

「ありがとうございました。」

石神と鴨山が二人揃ってお辞儀をして応急処置室を後にした


後から野田が出てきて

「私は上に石神の事を報告しなくてはならないから説明の方を頼んだぞ鴨山。また暴走するんじゃないぞ」

「はい。気を付けます。」

野田、鴨山が向かい合い敬礼をする。その二人に遅れて石神も後から敬礼をする

「では行こうか石神君」

「はい」


ガチャッとドアの音を立て小会議室のドアを開ける

「入ってくれ」

鴨山がドアを開きその間に石神が入る

「失礼します」

会議室の中はどこにでもありそうな四角い構造をしており、横に長い四つのテーブルが四角形を形成し各テーブルに椅子が並べられ計16人ほどが座れそうな会議室だ

そこに二人が対面し座る


石神が背筋を伸ばしまた落ち着かない素振りを見せる

「そんなに緊張しないでくれ、さて始めようか」

と言いつつ鴨山は「んっ、んん」と咳ばらいをしてから石神への説明を開始する

「まず君は十年前に起きた【世界自然大災害】を覚えているかい?」

「はい。その名の通り雷や地震といった災害が全世界の国や州に発生して被害を被った事件ですよね」

「そうだね。他にもそれに関連して火事や津波などもある。とにかく我々の能力は災害が起きた瞬間から、能力が身に付いた人間が点々と現れ今まで増えてきたのだよ。そして被害、即ち【自然の力】に関係がある」

両肘を机に立て両手を組み顎を乗せながら話す


「関係ですか、あっ!もしかして昨日自分を襲ってきた奴らもそれが関係しているんですか?」

「その通りだよ我々はその存在と戦っているんだ」

「では自分もそれに対抗するために自衛隊に参加しなくてはならない…と?」

「そういうことだ。そのために今君に説明をしている」

と言って鴨山は席を立ち部屋の片隅に置いてあったコーヒーポットに手を出し紙コップにコーヒーを入れて石神に差し渡す

「どうも。でもどうして皆さんや敵にこんな力が芽生えたのですか?」

石神がコーヒーを一口飲む

「それに関しては未だ明確な原因が不明なんだ。誰がどうしてこんな力を我々に与えたのかも」

鴨山も座りコーヒーを飲む

「誰かは分からない。だが何故この力が芽生えたのかの推論はある」

「というと?」

石神が真面目な目で鴨山を見つめる


「これは敵に関しての推論なのだが、敵が力を持ったのは世界自然大災害の被害者が関係している」

「被害者ですか…」

「もっと具体的に言えば君が先ほど言ったように雷や地震の災害で家族や大切な人を亡くした人間の集まりだ」

石神がバッと立つ

「えっ?そんな…それじゃまるで彼らが被害者みたいじゃないですか!」

「そうだ。だがその被害者が、俺達を倒しに来るんだ」

「………」

石神が両手を思いっきり握りしめ腕を振るわせる

「昨日襲ってきた敵だが水を扱っていたな。多分あの被害者は津波にでも襲われて大切な人間を亡くしたのだろう」

鴨山が石神への視線を体ごと避けて話す

「なんであんなことをしてくるんですか?」

「さぁな、多分失った気持ちを他に味合わせてやりたいんじゃないか?」

まあ落ち着けと言って石神を座らせる鴨山


「じゃあなんで皆さんはその力を手に入れたんですか?誰かを失ったりとか?」

「そんなことは無い。皆大切な人物を失っていないさ。まあこれも推論になってしまうのだが我々も敵も【思い出や心に残った事】や【想像イメージ】が関係するのだと思う」

「思い出?」

「質問だが君の趣味と夢は何だ?」

「自分は料理をするのが趣味で夢は料理人を目指しています」

「なるほど。そしてその料理に関する情熱度や真剣度はどれくらいだ?」

「両方MAXです!真剣に色々しながら料理をしていますので!でもその話に何の関係が?」

「言ったろ?思い出や心に残った事や想像が関係すると。君には料理に関してとても心に残った思い出があるはずだ」

「確かにあります。小さいころから母に教えてもらっていましたから」

と思い出しながらニコニコして答える

「なるほどそのためか」

鴨山が右手を顎に当て納得する


「ではもう一つ質問だ。料理をする上で何が一番必要だと思う?そしてこれは君の能力でもある」

「うーん。水ですか?」

「確かにそれもあるが違うな。それだと料理ができるのは刺身や生野菜辺りだ」

鴨山が冷静にツッコミを入れる

「じゃあ包丁?」

「離れていってるぞ」

フフッと少し笑う鴨山、石神は一生懸命考えている

「あっ!そうだ!」

閃く石神

「【火】ですね!」

「そうだ。君は火の能力を持っているのだよ」

「火…ですか?何かイメージ湧かない気が」

と石神は苦笑いをする

「どうしてこうなったかを説明すると」

一杯目のコーヒーを飲み終わって二杯目を取るため席を立つ鴨山


「火とは元々を考えれば自然の産物だと思わないかい?」

「自然の哲学は全く詳しくないですが確かにそうかもしれませんね」

「もっと簡単に言えばガスを点火すれば燃えて火となる。木を擦って摩擦を起こせば燃えて火となる。どうだ?簡単だろう?」

「はい」

コーヒーを持って席に座る

「まとめると料理をすることによっての中心は火だ。そしてそれは自然の物であり、君はそれを手に入れた」


「話を戻すが推論で言ったように我々も敵も思い出が関係しているんだよ。君は料理が好きだからその思い出を、そして敵は大切なものを…という思い出がある。俗にいうトラウマだ」

「悲しいですね…」

「お互いその思い出が原動力となっているんだよ。そして想像が膨らむ」


「何だか信じられませんが現実なんですよね」

「そうだ。その通りだ」

「つまり自分はそういう人たちと戦うんですね…少し怖いですが頑張ってみます。それに楽観的ですが、かっこいいですしね」

昨日の恐れがまた少し蘇るのか、それを押し込んで逃げない態度を表す石神

「頼りにしているよ。だが無理はするな」

心なしか期待していないような笑顔をしたあと真剣な顔で心配する鴨山

「はい。まだ新米ですし無理はしないようにします」

「そうだ。その考えを常に持て」


二人が少し間を置き落ち着いた後

「いきなりで悪いが君には今日から戦闘知識を身に着けてもらい、その後戦闘訓練も受けてもらう。」

「自分の力を使いこなすためですね?」

「そうだ。では行こう」

二人は紙コップを捨て会議室から戦闘知識を学ぶための教室へ向かった

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