第5話 真実の手前
「ん? ここは、霧の中? 俺一体何して… ハッ!?」
何かに感付き急いで後ろを振り向くと、そこには石神を襲った例の二人組が立っていた。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ」
石神は背を向け目を瞑りながら大きく腕を振りかぶって必死に走る。
「………」
タッタッタッと音をたて、無言で石神を追いかける二人
足音で気付いたのか石神は恐る恐る後ろを向きながら
「く、来るなぁ! 来るなよ! 来ないでくれえ!」
と必死に叫びながら逃げる。
必死に走った石神はまた行き止まりに来てしまった。
「なんで… なんでなんだよぉ!」
スっと二人組が腕を構え攻撃をしてくる。
「やめろぉぉぉ!」両腕を前に出し、精一杯首を後ろに下げながら叫ぶが、それもむなしく光に包まれる石神
「ハァハァハァハァっ やめろぉぉぉ!」
石神がベッドからバッと起き上がる。
「っ!? なんだ夢か… てか、眩しい!」
起きてすぐ風でなびくカーテンが朝日を防いだり、またまた日が差し込みながらも自分の状況を把握し、実際に自分に危害が加えられなかったことにホっとする。
ホっとするのも束の間
「!? ここどこだ!?ベッドといい清潔な感じの部屋といいパジャマ、病院かな?しかも怪我した肩も治療されてる。」
ベッドに座りながら首を傾げ、別の状況をまた把握しようとする。
「というか今もう学校の時間なんですけど!?」
正面上の時計を見ると時刻は8時30分を回っていた。
「てかあの後俺はどうなったんだ。ふんわりとだが覚えている、何か怪しい二人に追いかけられ、知らない人達に命を助けられて自衛隊の人もいたけど、俺倒れたのか!? で、病院に運ばれたと。」
飛んでいる記憶も相まって、今の状況とそれまでの過程を繋げてみた石神はすぐさま今の状況に察しがつき、ついつい右手をグーにして左手をポンと、ひらめいたように叩いた。
「イテっ」
叩いた衝撃が治療中の左肩に響く。
病室のドアがガラガラガラと開き
「おっ?気が付いたか少年」
石神を助けた自衛隊員が嬉しそうに笑っている。
[あれ?えーっとこの人は確か、野田さんだったか?ダメだ、記憶が曖昧だ。]
疑問に思いながら石神は自分の出した答えが正しいかどうか頭を抱えている
「ん?あー」
何かを察したのか野田は風が入る窓を閉めて、ベッドの近くにあったパイプ椅子に腰かけてから答えを出した。
「私の名前は野田だよ。そして君は倒れたから私がこの自衛隊基地まで運んだんだ。あの状況だから記憶が曖昧なのも無理はない。倒れるほど疲れが溜まっていたのだろう。」
「やはりそうでしたか、記憶が曖昧でもしも間違えたら失礼ですので言えませんでした。」
野田の方を向きニコっとしながら返答した。
「自分を助けていただきありがとうございます。貴方は命の恩人です。」
お辞儀をしながら感謝の意を表した。
「いやいや、一般市民である君を助けるのが私の仕事だからね。助かって良かったよ。」
「だが悪いが君は、これから一般市民では無くなるかもしれない…」
笑いながらの返答から一転して、首を少し横に振りながら暗い顔に満ちる。
石神は不安な顔になり
「え?それってどういうことですが?自分何かされるんですか?」
夢の中で感じた恐怖の破片が再び突き刺さり、目が震える。
「落ち着いてくれ、まだ[確定]じゃない[かもしれない]だからそう震えないでほしい。」
少しでも落ち着かせようとするが、焦って野田が立ち上がったため石神も更に動揺する。
だが徐々に石神の目から落ち着きが戻り
「は、はぁ。そうですね、とりあえず落ち着かなくてはいけませんね。」
野田への視線を外し正面を向きながら深呼吸をする。
「落ち着いたか?」
「は、はい。なんとか。」
[それにしても自分は動揺するのは仕方ないとして、何で野田さんまでこんなに動揺してるんだろ?]
二人とも落ち着き、肩が少し軽くなる。
「取り乱す気持ちはわかるが君にはこれから検査を受けてもらうことになる。その結果次第で全ての話が始まる。もちろん何もなければ君には家に帰ってもらう。」
「すまんな、起きてからすぐにこんなことに付き合わせてしまって。」
頭を下げ、今できる精一杯の謝罪を野田はかける。
「い、いえ。自分で良ければ協力しますよ!何たって命の恩人ですから!」
励ます感じで答える。
「そうか、そういってもらえると助かるよ。」
「でも今の時間が朝みたいなんで、先に学校に電話させてもらえます?」
「それなら心配ない!もう君の学校には休む連絡を入れさせてもらった。それに親御さんには別の理由で学校と伝えてある。大変失礼ながら君のスマホから個人情報を抜き出してね」
そう言いながら石神へスマホを渡す。
「そうですか、こんなんでは個人情報の抜き出しは仕方ないですね。連絡ありがとうございます。」
右手でゆっくりとスマホを受け取る。
「ん?あー!すみません!親友と家族から何度も電話来てるんで、かけなおさせてください!」
「確かに情報を抜き出し中にも何度も電話が来てたよ。では私は外すから終わったら声をかけてくれ」
そういって野田は病室を出る。
直ぐさま掛けなおし
「すまん!電話出れんかった!」
「なにしてたんだよ!心配したんだぞ!」
「「無事か!?」」
お互いの声がハモる。
「こっち昨日すぐに公園まで逃げたあとお前が来ないから、安全確認して家に逃げたんだけど連絡なかったから心配したんだぞ!これから学校休んで探そうとしてたところだ。」
「すまん、あの後色々あって今自衛隊の病室にいるんだよ。今はまだ細かいことは話せないがとにかく今俺は無事だ、心配するな。」
「……… そうか…。分かった。ならこのことは誰にも言わないほうがいいな。」
「確かにそうだな。内密にしてほしい。今度会ったらお前にはちゃんと話すよ。」
「頼むよ。じゃあ俺は学校に行くから。」
「ああ、くれぐれも気を付けてくれ」
ピッと通話を切り次は母親に電話をかける
[別の理由ってどういう意味だ?]
「あー俺だけど、あのさ連絡いってる?あの話」
「聞いてるわよ、夕べから友達の家で勉強会でしょ?」
「あー、そうそう」
「しっかりやったでしょうね?でそのまま学校行くって友達の親御さんから連絡来たわ。」
「うん、そうするつもりだよ。」
「じゃあそれもしっかりやってきなさい。じゃあ電話切るわよ。」
「うん。じゃあね」
プープーと通話後の音がなる。
「なるほどそうやってごまかしたのか、思いつかなかった。親御さんて多分野田さんだろうな。これなら心配かけないで済みそうだ。」
スマホ片手に頷いて感心する。
病室のドアを開けると反対通路の窓際に野田はいた。
「電話終わりました。」
「そうか。では行こうか」
そういって二人は病室を後にした。
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