第4話 救助

「そこまでだ!全員突撃!対象を守れ!」

どこからか発せられた何らかの図太い声と同時に、何らかの力で石神は攻撃から守られた。


飛んできた水球は[ビッシャァァァ]と弾かれ、両サイドの壁に水が付いた。


「え、何?」

肩の痛みはその時には無くなり、今は痛みよりも目の前の事態に感覚を奪われる石神。


そう。明らかに石神よりも年上の男女四人が攻撃を水のバリアで防いだからである。


「何!?」

「なんだと!?」

攻撃を防がれた敵二人は数の差に劣勢感を感じたのか、とっさに撤退の態勢に入った。


「良い引き際だ。だが逃がすな!」

さっき聞いた図太い声がまた走る。

「了解!」

男女四人がすかさず追跡を開始する。


「よく頑張ったな」

「え?」

石神がもたれかかっている壁の上からその声は聞こえた。

壁の上の男は飛び降り石神の前へとスマートに着地した。

「あ、あなたは?」

振り向きざまに彼は

「私は自衛隊の【野田守のだまもる】だ。よろしく、少年。」

と答えた。

野田の見た目は40代前半くらいで自衛隊の服、帽子を身に着け黒い髪は帽子の中でまとまっており、180cmと高めの身長をしている男性だ。

「はっ、はい。よろしくお願いします。助けていただきありがとうございます。」

「さて、名前だけでなく他にも色々自己紹介等をしていきたいところだが、今はそんなところではないな。」

「そうですね…」

やっと痛みと尋常じゃない疲れの感覚が戻ってきたのか、返答に力が入らない石神。

「ん?怪我をしているのか?では肩を貸そう、掴まりなさい。」

「はい…」

「君を保護するのが我々の仕事だ。」

どうにか掴まりながら通ってきた道を戻る二人。


「さて。」

「どうしたものか。」

突如攻撃を防がれて逃げた敵は今、背中合わせになりながら十字路で挟み撃ちになっていた。

お互いの正面には男性二人、そして左右に女性二人が挟んでいる。

「性能実験をしたはいいが見つかってしまった。」

「本末転倒ね。まぁそれなりに楽しかったからいいけど。」

ニヤニヤとしながらオレンジショートの女子が答える。

「お前ならどうする?」

「そうねぇ。剣はまだある?」

「無いな。実験の時使って壊れた。」

「そう、なら逃げるしか無いわね。」


「ん?こいつらずっと攻撃してこないぞ」

「もしかしたらまだ経験不足かもしれないわ」

「なら私たちでもやれる」

「行くぞ!」

四人の気合が一気に膨れ上がり、白黒の配色が確実なものとなっていく。


「実弾装填、サプレッサー装備、確実に当てろ。そして音はこれ以上上げたくない、慎重にな。」

遅れてきた野田が、石神の隣で野太くも静かな声を再び上げる。

「了解」

それに合わせ小さい声で対応する一同。


「保護するといいながら悪いが見ておいてくれ、少年。この戦いがどのようなものになるかを」

石神は力が無いながらも真剣な眼差しで野田を見た後、息をのみ戦いの場所へと顔を向ける。


「いいか、外灯で敵の姿は見えてんだ。外すなよ。」

サプレッサーを装備したハンドガンが敵を狙う。

四人のうち一人がそう言う。


「盛り上がってるとこ悪いけど、逃げさせてもらうわよ」

そういうと先ほどより一回り小さい水球を瞬時に作り、外灯に当て光を奪った。


「見えない!」

「まずいわ!」

「どうすれば!」

「何!?」

一同がパニックになる中、敵二人は暗闇の中を石神達が来た道の反対の方向へ走り抜け、それと同時に男性の足を損傷させて包囲を脱出した。


「いっ!痛てぇ!」

足をやられて、一同も遅れて脱出されたことに気付くがもう遅い。

二人は外灯に照らされ、暗闇に覆われ、の交互に姿を現し、消しながら遠くへ逃げた。


残り三人が追跡を開始しようとするが

「追うな、もうこれだけ距離が離れれば追いかけるのも困難だ。けが人を優先して介抱しろ。」

「くっ、了解」

悔しそうな顔で返事をする。

「すまない、俺が足をやられなければこんなことには…」

「気にするな」

「仕方無いわよ、誰だってこうなるわよ。」

「そうよ。」

フォローのつもりか、笑いながら肩を貸す三人。


「「「「!?」」」」

四人全員が突如、逃げていった二人とは別の方角に驚きながら顔を向けた。

「なに?今の強い感覚…」

「怖いわ…」


女性陣が恐怖し、野田達もその方角を見る。

「なにか良くないことが起こっているようだ。そして君には戦いを見せることができなかったな。」


「そぅですゕ…」

とうとう石神が力尽き、借りている肩から崩れ落ちて地面にダイブしてしまう。


「大丈夫か!?少年!!」

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