第3話 必死
「見つかったか」
「ええ、そうみたいね」
謎の男女が屋根の上で二人を見下ろす。
「なんなんだあいつら、普通あんなとこいないだろ」
石神が身構え警戒しながら疑問の声を発する
「あんなとこにいるのを見つけるお前も普通じゃないと思うがな。多分俺の予想だけど、今回の事件の張本人…とか?」
驚きながらも笑みを浮かべて石神を横目にして答える
「てかなんだ?細かくは見えんが黒スーツで赤髪の男にオレンジ色のショートの女か?なかなかシュールだな」
緊張は解け、徐々に前田が面白そうな顔で見ていく
「目撃者は排除するしかないわ。任せて」
というと女の右掌から水が噴き出し[ジョロロロ]とコップに水を入れるような音を立て水は徐々に形になっていく、掌の上には小さな水の球体が完成した。
「!?」
「すっげー!どうやったらあんなことになるんだ!?魔女じゃん!魔な女じゃん!」
「目をキラキラさせてる場合か!!多分じゃなくても危ないぞあれ!さすがのお前でも気付くだろ!」
喜びながら興奮する前田とは反対に別の意味で興奮する石神
「フッ」
魔女が笑いながら手を二人の方向にかざす。
「やっべぇ!多分あれ撃ってくるぞ!」
逃げの態勢に入る石神
「確かにやばい…かな?」
さすがの前田も気付いたのか石神に続き逃げの態勢に入る
[ブシュウウウウ]とまるでロケットが噴射したかのように水しぶきを上げながら球体が飛んでくる。
「来た!逃げろ!」
「クッ!」
二人は即座に背を向け逃げた。
初弾は二人に当たらず[ビシャアアアア]と思いっきり音を立てコンクリートに衝突する。
二人は振り返り地面に当たった水を見る。
「危なかったな。あれに当たってたらどうなってたんだ」
「なぁんだ水程度か。なら多分大丈夫だって!何とかなるさ!」
焦る石神とは裏腹に客観的な前田
本当にお前は…と言いたそうに溜息をつきながら目を瞑り、左右に首を何度も振る石神
それに気付いたのか、前田は再度ポジティブシンキングを体現するように親指を[グーッ]にする。
「ったく」と言いたそうになりながら敵男女二人に再度顔を向けると
「っな!?」
既に魔女は左手に水球を用意しており、もう飛ばす準備ができていた。
そしてまた水しぶきを上げ石神に水球が飛んできた。
「まずい!今度は避けられn」
水球を見ながら必死に避けた石神であったが間に合わず、水球が左肩にかすったと同時に[ガキッ]という鈍い音がした。
前田は驚愕して口を開けながら見ることしかできなかった。
二人の間を通過した水球は地面に当たり水となって弾けた。
「グッ!! ぅぁぁ!」
声にならない小さすぎる叫びと共に石神は倒れた。
「おい!大丈夫か!?」
前田が倒れている石神に膝をついて即座に反応をうかがう。
「大丈夫なものか…これめっちゃ痛いぞ 砕けてはいないと思うけど多分外れてる っ!!」
「見せてみろ!」
前田が、水で濡れている石神の左肩を見てみると青いあざができている。
「なんなんだあの攻撃…こんな腕になっちまって」
「多分だけどあの水球はとてつもない程の水圧なんだと思う。そうじゃなきゃかすった程度でこんな色にはならないし肩は外れない。」
「確かにやばいな… これ… とりあえず病院に連れてってやる!」
固唾を飲みながら目が少し震える前田
「いや、いい。それよりも逃げることが大切だ… 二手に分かれれば必ず奴らは手負いの俺を狙うはずだ」
そう言いながら右手を補助に立ち上がる石神だが、既に石神のしゃべりには気力が無い状態であり立ち上がるのもやっとだ。
「そんな体で!ダメだr」
前田も膝を上げ立ち上がりながら石神を制止しようとするが
「いいから!行くぞ…」
力を振り絞った発言の中にある何かを感じ取った前田はいつも通りに
「そうか。なら… お前を信じるよ!」
「住所は知られたくない、隣町の公園でまた会おう」
「分かった!」
[バッ]と二手に分かれた二人は、すぐさまそれぞれが目的地へ到着する道へ乗った。
「!? まさかとは思ったがあれはまずいな。逃がすわけにはいかない」
「確かにそうね。逃がさないけど」
「始末する。急ぐぞ」
「そうね」
二人は屋根から飛び降り石神を追いかけるため走った。
「よし、食いついた。」
走りながら振り返り自分の現状を把握した。
左肩を負傷しながらも必死に走る石神は人並み以上の足であった。
死ぬのはほぼ確定しながらも「100%死が決まっているわけではない」、「死にたくない」という一心で走っているためである。
「ハア、ハア」
息を切らしながら走っているが致命的なミスをしてしまう。
「やばい… 終わった…」
逃げることに必死になってしまった結果、地元の道に慣れていながらも道を間違えてしまったのだ。
「くそ、どうしてこんな大事な時に…」
石神が曲がった先は一本道で行き止まりであり、戻ったら男女二人と鉢合わせてしまう。
「結構頑張ったけど、おしまいよ」
「さぁ、止めを刺してやれ」
追いついた二人が少し余裕のありそうな声で話すと、先ほど聞いた水の音が鳴ると同時に掌の上に水球ができる。
「!? ここまでなのか… 夢叶えたかったなぁ」
背中を背後にあるコンクリートの壁に預けながら、星空を見上げて肩の痛みと心の精神的負担が押し寄せてきて涙が出てしまった。
「ここまでよ」
水球が飛ばされた瞬間一人の男の声が響いた
「そこまでだ!全員突撃!対象を守れ!」
そう男が叫んだ瞬間数人の男女が空から現れ、石神を何らかのバリアで守った。
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