プロローグ ③

「!? 来る」

 身構えた矢先前方から人一人が入れるほどの車輪が飛んできたのだ。

 よく見るとその車輪は燃えており、周りにある草や木を燃やしながらこちらに転がってくる。

[ボウッ]と火の音を鳴らしながら車輪はドリフトをするようにUの字を書きながら車輪は止まった。

「ふうっ よくここまでこれたな」

 青年石神は目を瞑りながら燃えた車輪の中から出てくる。


 石神は腕を組みながら無気力な言い方で

「想像力次第でこんなこともできるのかぁ」

 などと言いながら燃え尽きた車輪を見ている。


 女性と石神の距離は少し遠めのキャッチボールができるほどの距離にある。


「ん?」

 石神が首を左に向けて立っている女性に気付くと

「あー、あなたがハッキング起こして攻撃してきた主犯ですか?」

 またまた石神は無気力で問いただす。


 女性も石神が超能力者だと気づき冷静に答える。

「ええ、そうよ。それにしてもあなたどうやってここに来たの?」

 ノートパソコンを両手に持ちながら肯定し、眉を寄せながら半身はんみになって質問する。


「どうって言われても車輪を走らせてきたんですよ。ハムスターが使ってる車輪みたいに。あれって地についてないから走れないだけで、地に着いたら走れるんじゃないかなと思ってここまで走って来たんですよ。」

 疲れましたけどね…といいながら肩を下げて言う。


「にしてもすごい恰好ですよね~ 金髪ロングで全身真っ黒な服を着て おまけに杖らしき物も背負ってノートパソコン持ってサングラス、兵士さんの報告通り怪しさ満点だ。」

「で、私をどうするつもりなの?」

 姿勢は変わらず半身になって問う。


「速攻であなたとそのパソコンを破壊すればハッキングが解けるかなと思いましてね。」

 石神の答えに対してニヤリとしながら答える女性

「あら、そう。でもそれはどうかしらね?」

 そう答えた後に指パッチンをする女性。


 すると突如土の中から四機のASRが出現し、線で結べば四角形になるようにASRが配置され石神はその真ん中にいた。

 つまり囲まれたのだ。


「ASR全部を基地の攻撃に回さないのは懸命な判断だったわ。」

 自らの判断を自慢げにいう女性


「やばいなぁ」

 苦笑いして呟きながら石神は各角の位置にいるASRを目で確認する。


「さぁ、これで終わりよ」

 そういうとパソコンのEnterキーを押し、ASRが射撃行動に移った。


 数秒後ズドドドドドドとガトリングが弾を放ち、漏れた弾丸が対角線上にいるASRに当たりカンカンと音を鳴らしながら土を落としていく。


 そして肝心の石神はというと、両腕を横に伸ばしながら四方向からくる弾丸に対して上半身を守れるほどの大きさの炎の盾で攻撃を防いでいた。

 ジュウ、ジュウ、と音を立て各方向の弾丸は一瞬にして焦げるまもなく蒸発した。


 石神はニヤニヤとしながら

「狙いは頭や胸などの急所を狙ってきている。それに対して攻撃は防げてるな。」

 石神は心配していたのだ。ASRの照準が少しでも自身の体全体に向けられて撃たれるのかを。

 少しでも防ぐのに失敗すれば弾丸が体に当たり集中力は途切れ、盾は無くなりあの隊員のように肉塊になってしまうからだ。

 ASRは石神の上半身に攻撃を集中し、石神はそれを防ぐことに成功したのだ。



「馬鹿な!車輪といい四つの盾といいこの青年にはこれほど想像力があるというの!?」

 女性は驚き数歩後ずさりをした。


「そろそろ終わらせるか」

 石神はニヤニヤした顔から一変し真顔になり決着をつける準備をした。


 石神は両腕を一瞬引っ込ませ勢いよくもう一度「ふんっ!」というかけ声と共に腕を伸ばした。


 すると炎の盾は勢いよく各ASRへ飛びASRの全体を包み込みチーズのようにドロドロに溶け戦闘不能になった。

 石神はそこから続けざまに「これで終わり」と少し重い声をしながら、右手には炎のナイフが形成され、それを[ヒュッ]と音が鳴りそうな勢いでナイフを女性の持っているパソコン目掛けて投げたのだ。


「何っ!?」

 ナイフは即座にパソコンを刺し女性はパソコンを捨て後ろにステップを踏んだ。




 それと同時に[ブウウーン]と基地内にいるASRの動きが止まった。

「止まったのか?」

 疑問に思いながらも隊員たちは自分たちが生き残ったのを理解した。



「銃撃が止んだ。となるとあとはあなただけですね。」

 首を後ろに向け再び前に戻す石神


「投降してください。そうすれば優しく連行します。」

 右の手のひらを上に広げ前に突き出しながら問う。


「それは無理ね。」

 女性が答えた瞬間ヘリコプターが石神の後ろから勢いよく飛んで現れたのだ。

 砂塵が舞い前がよく見えない石神。

 サングラスのおかげで砂塵の中でも見える女性はヘリコプターから垂れる縄梯子に手を掴みそのままヘリコプターと共に去っていった。


 逃がした。と悔しがった数分後に石神の後ろには救援ヘリが飛んでいるのが見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る