第137話 ソンマイ卿

「ユウマ、水竜の杖を俺に献上しろ」


ソンマイ卿がそれが当然の事の様に俺に命令する。


「お断りします」


即答で拒否しておく。


「おい、貴様、平民の癖にソンマイ様の言う事が聞けないのか?」


隣の騎士が睨みながら前に出て来た。


「聞けません。私は公爵に呼ばれてここにいる認識でいるので、公爵の客だと思うのですが、この家では客の持ち物を奪うのですか?」


「お前は面白い事を言うなぁ。くくく」


ソンマイ卿の尊大な態度は変わらない。そしてスプリンに何やら目配せした。


俺の横にいたスプリンが手袋を外し、俺に投げつけてきた。


投げられた手袋は俺に当たらない。俺が展開していた亜空間に当たり下に落ちた。


ソンマイ卿と騎士達はちょっと驚いている。


「ソンマイ様に対する無礼な言動は看過出来ん。客人であるので、いきなり拘束する事はしないが決闘だ。俺が勝ったらソンマイ様に詫びて水竜の杖を渡して貰おうかぁ!」


スプリンが右手の手の平を上に向けて俺に「寄こせ」とジェスチャーをする。


はぁ、ソンマイ卿のニヤニヤしてる顔を見ると、ここまでは計画通りなのかなぁ? 


全く無茶苦茶な話で意味が分からないんだけど。街で因縁をつけてくるチンピラの方より筋が通ってないぞ。


此奴ら……、馬鹿か?


さてどうしようか……。


ん? 空間把握を使って周りを確認していたら……。


ん? トティがこっちに向かって来る

みたいだ。


「お断りします」


断固拒否しておこう。


「なにぃ! 冒険者の癖に腰抜けかぁ?」


スプリンが一生懸命俺を煽ろうとしているが、そんな手に乗る様な馬鹿はいないだろうに。


俺は無言でトティがこの場に来るのを待つ。


「いいから訓練所に来い」


スプリンが俺を掴んで連れて行こうとしたので、スプリンを封印して動きを止めた。


「え? 何があった?」


ソンマイ卿がスプリンが固まっているのを見て、何が起こってるのか分からず、周りの騎士達に確認している。


「ソンマイ、何をしている!」


やっとトティが来たよぉ。


「この男が無礼なので、ちょっと懲らしめようと……」


「私の客に何をしようとした!  ユウマさんが客間にいないので、探しに来て良かったよ。ユウマさんごめんなさい」


「トティさん、この家では、主が面会する相手に無理矢理決闘を申し込んで、所持品を奪うのですか? この男に決闘を申し込まれて、俺が負けたら水竜の杖を寄こせと言われましたよ」


「え? な、何て事をしてるんだぁ! ソンマイぃ!」


「くっ、『海の洞窟』攻略者の実力をちょっと見ようと思っただけだ。まあ、上手くいけば水竜の杖を我が手に出来るだろう」


「馬鹿な事を……」


「あ、トティさん、俺はもう帰ります。いきなり客に決闘を申し込む様な所には、全く信頼出来ませんので居られません。公爵閣下にもその旨お伝えください」


「あ!」


俺は空間移動で、居城前のリーマラと一緒に転移した場所に転移した。


「ソンマイいいいいいいいい!」


トティの叫び声が聞こえた。


さっき空間把握をしたとき、気になる奴を見つけたんだよなぁ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る