第136話 衛兵スプリン
「トティ、私は転移魔法を使って疲れたから、部屋で休むわ。どうせ謁見は明日になるでしょ」
「そうね。リーマラ、貴方は休んでください」
「ユウマくん、じゃーねぇ」
リーマラは1人で何処かに行った。
「ユウマさん、私はお父様に到着の報告と謁見の許可を取ってくるわ」
トティはそう言うと周りを見て、衛兵の1人を呼ぶ。
「スプリン、ユウマさんを客間に案内して。ユウマさん、謁見は明日になると思うので、今日は客間で休んでください」
「は、はい……」
痩身で美形の衛兵スプリンはトティとユウマの元に駆け寄る。
「畏まりました」
俺はスプリンの後についていく。
ん? 空間把握で居城を確認しているけど、何だか外側に向かっている様だ。
「何処に行くのですか? 客間の方向じゃ無いですよね」
俺はスプリンに尋ねる。
「ちっ、気付いたか、いいからついてこい」
俺をチラ見した後、前に進むスプリン。
俺は立ち止まる。
「俺が公爵に呼ばれて来てるのを知ってますかぁ?」
スプリンは俺がついて来ないのに気付き振り返る。
「ちっ、平民の冒険者ごときが客面するなよ。四の五の言わずついて来い」
「ちゃんと説明して貰えませんか? 何処に連れて行こうとしていますか? このまま真っ直ぐ進むと……、ははぁ、訓練所ですか」
「貴様ぁ、この城に来たことがあるのか?」
スプリンは連れて行こうととした場所を言い当てられて驚く。
訓練所に連れて行こうとしているのは、間違いなさそうだな。
「俺の事を話すつもりはありません」
「くっ、生意気言いやがって。」
訓練所にいるのは……、空間把握で訓練所を調べると、複数の騎士と共に公爵の次男がいた。名前はソンマイねぇ。
ふ~ん。
「ソンマイ卿が俺を呼んでいるのかな?」
「な、なにぃ! 何で分かったぁ!」
図星かぁ。
「俺はトティ公爵令嬢に呼ばれてここにいるので、ソンマイ卿とに面会は遠慮しておくよ」
厄介事にしかならないよなぁ。
俺は振り返り来た道を引き返す。
「ちょ、ちょっと待てぇ!」
スプリンが大声を出して、慌てて俺の腕を掴もうとする。
俺はスルッとスプリンの掴もうとした右手を躱す。
「なんだなんだ!」
スプリンに大声が聞こえたのか、ぞろぞろと訓練所から騎士達が出て来た。
「おい、貴様は何者だ?」
騎士達は俺とスプリンの方に走ってくる。
これ、走ったら逃げたと思われて面倒事になるなぁ。
俺は諦めて騎士達が来るのを待つ。
「公爵令嬢トティ様に言われて、公爵様と面会に来たユウマと申します」
騎士達の後ろから、ニヤニヤしながら貴族服の男が出て来た。
「貴様が『海の洞窟』を攻略したAランク冒険者のユウマか?」
「はい。そうです」
「おれは公爵次男のソンマイだ」
はぁ、厄介な事になっちゃったよぉ。
「ソンマイ卿、ユウマはソンマイ卿が訓練所にいらっしゃるのを知ってて同行を拒否しました」
スプリンはソンマイに駆け寄るとそう説明した。
「ほう、俺の誘いを断ったのか……。無礼だな。くっくっく」
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