第135話 ドア・イン・ザ・フェイス

公爵令嬢でSランク冒険者のトティが、俺を無言でジト目で見ている。


俺も無言でトティの言葉を待つ。


多分彼女に取っては、一世一代の結婚の申し込みだったのだろう。


それを断ったのだから、もしかしたら怒って不敬罪になっちゃうかも知れない。


そしたら、逃げよう……。って考えてる。


「はぁ、分かりました。今は・・受けられないと言う事で理解しましょう。冒険者パーティーを組んで一緒に活動しましょう。その中で私の良さを分かって貰います」


「え? それも無理です。俺の戦い方は秘密なので……」


「空間魔法でしょう? 王国での活躍は聞いていますよ」


「ん~……」


公爵令嬢と一緒のパーティーなんて厄介事としか、思えないんだよねぇ。


俺が難しい顔をして考えていると。


「下着屋さんでの貸しが、あ・り・ま・す・よ・ね!」


「えぇぇぇ、ここで使いますかぁ? タクヤさんの封印解除で借りは返す気でいるんですけどねぇ……」


「ちっ、そっちもあったか……」

ぶつぶつ小声で呟き悔しそうな顔のトティ。


「はぁ、じゃあせめて父には会っていただきます。それぐらいいいでしょ!」


くっ、断り難いなぁ。これが交渉上手?

ドア・イン・ザ・フェースって奴か?


始めに過大な要求をしておいて、断られたら次は要求の度合いを落として、いかにも譲歩したように見せかけて、貸しを作った気にさせるテクニックかな。


結婚 → パーティー参加 って断ったら、公爵との面会を断り難くなっちゃったよぉ。

公爵と面会もいやなんだけど……。


日本人は小心者だから、「分かっちゃいるけど」って奴だよぉ。


「はぁ、分かりました。公爵様との面会は承知しました」


会ったら会ったで、何か断り難い事を言われるんだろうなぁ……。


「にまぁ~」っと笑って、「してやったり」のトティ。


くぅ、やられた……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


トティとリーマラに連れられて、公爵の領であるステキサに連れてこられた俺。


リーマラの転移魔法でひとっ飛びだった。


「善は急げ」と思っているのか。


クロドとルアは連れてきていない。


どうやらリーマラの転移魔法には、制限があるようなので、ルアとクロドはアカリフォルニで待って貰ってる。


ルアは前例があり心配なので、クロドにはルアの護衛を念入りにお願いした。


クロドは割りと楽観的で、放任主義なのでちょっと心配ではある。


フラグじゃないよ。ないと思う。ないよね。フラグだったらどうしよう。


さて、公爵の居城の門の前で、トティがなにやら高価そうな、公爵家の紋章が入った短剣を見せて中に入ったので、後をついていく。


「お嬢様、お帰りなさい」


執事とメイド的な人達のお出迎えで城に入ったのだが、流石公爵の居城だ。


豪華で大きい、多分方向音痴の人が一人になったら迷子になる感じだ。


俺は空間把握があるから迷わないけどね。

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