第138話 ジボーとズピー

俺がこの都市ステキサで空間把握を使った時、信じられない奴がこの都市にいる事を知った。


トヨシモ……。


王国で暗躍していた元騎士団情報部の正体不明の男、天槍ベーマタ騎士団長が行方を追っていると言ってた気がする。


ラースウィフ公爵家の都市、ステキサに居るなんて……。


俺は厭な予感がして、トヨシモがいる建物に向かって走る。


すると進行方向を遮る様に二人の男?が立っていた。


1人は、アッシュブラウンの長髪をヘーゼルグリーンの瞳の横に流し、黒いラビハットを頭に乗せて、カラフルなエクステを編み込んでいる。細い眉に中性的な顔立ちで化粧をしていて、原色の派手な服が目立つ。


もう1人は、黒革のアイパッチが印象的でロン毛のソバージュヘア。

黒革で鋲付きのライダーズジャケットに黒のスパッツ。

ダークブラウンの瞳が凛々しい美形。


エクステの男が口を開く。


「Aランク冒険者のユウマさんね? 私はジボーで、彼はズピー。トヨシモの元へ向かってると思うんだけど、ちょっと待って貰えないかなぁ?」


俺は立ち止まりジボーとズピーと向かい合う。


「トヨシモの仲間ですか?」


俺はジボーに尋ねる。


「仲間ではないわ。トヨシモを泳がしているので、今捕まえられると困っちゃうんだよねぇ」


「貴方達は何者ですか?」


俺はこの2人の事は知らない。

「はい、そうですか」と信じて引く事は出来ない。


「貴方と敵対する様な愚かな行為をする気は無いので、白状しちゃうけど、私達は王国の諜報部隊の者よ。第三王子殺害の件で犯人を追っていて、トヨシモに辿り着いたわ。トヨシモの背後にいる者を知りたいの」


「王国では剣姫アスカが犯人と考えていると思ってましたが……」


「王家専属騎士隊、副隊長デミツヒの先走りね。国王はアスカの殺害命令は出してなかった。デミツヒは「事情を聞くため連れて来い」との命令を無視して、アスカに戦いを挑み殺されたそうね」


「そうですね」


「ふふふ、現場に貴方もいたと報告を受けてるわ。時間が掛かったけど、第三王子の殺害者は特定出来て、その背後にトヨシモとアラクネがいた事も判明しているの。そして帝国好戦派・・・・・の第三王子を殺して得する誰が背後にいるか知りたいのよ」


「そうですかぁ」


本当に諜報部隊か? こんな派手な格好で諜報部隊が務まるのかなぁ。


何て考えていたら、俺が無意識でジロジロ見てたのか、俺の考えていた内容が分かった様で……。


「ふふ、私達は隊長格だから直接諜報はしていないのよ。どちらかと言うと、命令して判断する役割だからねぇ。普段は姿も現さないし……」


ジボーはそう言うと、姿を消した。


「まあ、あとは荒事の時に出るのさ」


ズピーがニヤリと笑って口を開いた。


空間把握で確認すると、ジボーはその場にいて、姿が見えなくなっている様だった。


まるでカメレオンの様に……。


そして空間が揺らぎジボーがまた現れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る