第129話 痴漢冤罪

女性服屋で2人の女性が俺を囲んで、大声を出している。


「ちょっとぉ、私達の連れになんて事してくれてんのよぉ! スケベ野郎」

「こんなところで痴漢するなんて信じられない! 変態!」


「え? え? スケベ野郎? 変態? ……そ、そんな事……、してないよ……」


俺の手を掴んで座って泣く女性をじっと見る。


「なにかの間違い……、だよね……」


「うるさああああい! 観念して衛兵に連行されなさい!」


「えええええええ」


俺は、無実だああああああ!


「はーい、ストップよぉ」


パンパン!


手を叩く音がして、みんながそちらを見る。


「私はSランク冒険者のトティよ」

「同じくリーマラよぉ」


え? トティさんとリーマラさん?


「私はユウマくんを見てましたが、お尻に触ってませーん」


「はいはい、いつまでも嘘泣きしないの!」


トティが泣いて座る女性を立たせて、両手で顔を押さえて、無理矢理顔を上げた。


「ほら、泣いてないじゃん」


「くっ……」 (邪魔しやがって)


女性はトティを睨み、トティの両手を払うと、店の外に逃げ出した。


俺を責めてた二人の女性も店の外に飛び出す。


「ユウマくん、こんな店に男一人で入っちゃダメよ。変な誤解を受けちゃうわ」


「女性下着に興味があったのかしら?」


リーマラが飾ってあるブラを手に取って、俺の目の前に広げた。


「うふふ、こっちよねぇ」


トティが笑いながら透け透けのピンクのパンティを広げて、目の前に出す。


「止めてください。仲間の女の子がこの店に入って、居なくなったんです」


「え? 女の子の仲間がいたの?」


「はい……」


俺はトティとリーマラにルアがこの店から居なくなった事を話した。


トティは店員を直ぐに呼んでルアの事を聞いてくれた。


「はぁ、その人なら急に具合が悪くなって、お連れの方が裏に止めていた馬車に乗せて、連れていかれました」


え? 誘拐! 


「その馬車はどっちに向かったの?」


トティが店員に尋ねる。


「はい。街の中央に向かったと思います」


「ふむぅ、私の魔力探知では、会ったことがない人の魔力は追えないわ」


とリーマラが言うと。


「困ったわね。どうしましょう」


とトティも思案顔。


「いや、俺のスキルで追えます。今確認しますね」


俺は空間把握でルアを探した。


「いた。街の中央にある大きな建物の中にいます」


「え? それって領主アカリフォルニの居城じゃない」


「拙いわね」


「いや、ここからは、俺一人で行きます。色々有り難う御座いました」


「ん~、寧ろ私に任せなさい。ちなみに痴漢冤罪から助けた貸しは後で返して貰うからね」


トティが俺にそう言うので、


「はぁ、痴漢冤罪の件は俺が出来る事であれば、借りは返しますが……」


「まあまあ、領主の件も大船に乗ったつもりで、トティに任せれば大丈夫よ。乗り掛かった船だもの、悪いようにはしないわ」


リーマラが自信を持って断言するし、助けられた事もあってお願いする事にした。

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