第128話 女性服屋

俺とブラックドッグのクロドは女性の服屋さんの前で、人魚のルアを待っていた。


……戻って来ない。


女性の買い物は時間が掛かると、何となく分かってるので、のんびり待ってたし、空間把握で何をしてるか見守るのも、何となく気が引けてクロドをモフりながら待ってたのだが……。


「クロド、ルアは遅過ぎるよね?」


クロドは鼻をヒクヒクして俺に応えた。


「そうだな遅いワン。クンクン……、店の中にもいないワン」


「え! いない?」


「うむ、ルアに匂いがしないワン」


俺は意を決して店の中に入った。


店に入ると入口付近は女性の下着がこれでもかって飾られていた。


入口に置かなくてもいいじゃん……。


店の中には女性客が極端に多く、数える程しかいない男性客も女性連れで、恥ずかしそうにしている。


1人でこの店に来ている男性客はおらず、女性客の驚きと蔑みの視線に晒される。


「何しに来たのかしら」

「きっと変態よ」

「いやらしいわ」


女性客達の囁きと嫌悪感溢れる視線を鉄の心で無視して、恥ずかしくて俯きながら、店員を探してキョロキョロ見回す。


(あら、ダンジョン攻略者のユウマだわ。うふふ、男一人でこの店に入るなんて、しかも顔を真っ赤にして……、チャンスね)


「きゃああ! 痴漢よぉー、この男が私のお尻を触ったわあああああ」


え! 触ってないけど?


俺の横にいた女性が急に大声を出した。


「ちょ、ちょっと待って、触ってないよ」


「痴漢はみんなそう言うのよぉ! 女性の敵よぉ、うわああああん」


女性は俺の手を掴んで泣き出した。


「なになに」

「痴漢だって」

「ええええええ、酷い」

「だから男一人でこの店にいたのね」

「衛兵を呼びましょう」


女性客が周りに集まって来た。


え? え? どうなってんの?


戸惑う俺。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「トティ、じゃあ、直ぐにアカリフォルニに行きましょう。入れ違いになると面倒だから飛ぶわよ」


「そうね、リーマラ頼んだわよ」


トンワシンの冒険者ギルドを出たトティとリーマラは手を繋いだ。


リーマラが詠唱すると、転移魔法が発動し二人の足下に魔方陣が現れて、二人は足から魔方陣に吸い込まれていく。


アカリフォルニの冒険者ギルドの裏に魔方陣が突然現れると、魔方陣からトティとリーマラが浮かび上がって来た。


「リーマラ、ユウマくんはどこかなぁ」


「そうねぇ、ユウマくんの魔力は覚えてないので探知出来ないけど、クロドちゃんの魔力はバッチリ覚えてるわ。この都市にいれば分かるわよ」


リーマラ詠唱しアカリフォルニの都市に魔力探知を張り巡らせる。


「いたいた。クロドちゃん見つけ! 女性服の店の前にいるわ。トティ、飛ぶよ」


「了解!」

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