第127話 領主アカリフォルニ

アカリフォルニ領主の館。

領主の執務室に諜報部隊の一人が現れた。


「アカリフォルニ様、『海の洞窟』が攻略されました」


「なにぃ! 誰が攻略した? 近辺の都市に、それほどの実力のある者がいなかったはずだが……」


「攻略者は、流れの冒険者で、名前はユウマと申します」


「ふむ、そこまでの実力がある者であれば、この都市に有益だなぁ。良し、面会しよう。褒美を使わすと言って召喚しろ」


「は、直ちに使いを出します。それと、あと一つ情報があります」


「ん? なんだ?」


「攻略時に入手したお宝が『水竜の杖』と言う武器でして、なんとっ! リヴァイアサンを召喚出来るそうです」


「な、なにぃ! リヴァイアサン!! それは是非手に入れるぞ。冒険者なんかに持たせるには、宝の持ち腐れだ。リヴァイアサンを自由に操れるなら、百万の軍を得る事と同義、この国の国王にもなれるだろう!クックック、運が回って来た様だ」


「イッヒッヒ、持っているのは、攻略者の従者である若い女性と聞いています。奪うのも容易いでしょう」


「良し、任せたぞ。どんな手を使っても構わん。『水竜の杖』を手に入れろ! あぁ、攻略者との面会は無しにしよう。攻略者に気付かれぬ様に『水竜の杖』を奪うのだ。クックック」


「承知しました。イッヒッヒ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


宴会の翌日。


俺とブラックドッグのクロドと人魚のルアは、街を散策していた。


「ユウマ様、あの店に入ってみましょう」


人間の街に来るのが初めてのルアは、見るもの全てが物珍しく、はしゃいでいた。


ルアが俺の前を歩いていて、ルアを見たその時、たまたま強い風が吹いた。


ルア着ていた服は、ダンジョンで亡くなった女性冒険者から剥ぎ取った服だが、下に履いていたのはスカート。


スカートが風に舞う。


「キャッ」


スカートを押さえるルア。


「え!……」


俺は目が点になって、凝視してしまう。


ノーパン……。


そう言えば、女性冒険者から服を脱がせてルアに渡したが、下着は渡していない……。


ヤバっ。


昨日からノーパンだ!

宴会で誰かに見られたか?

膝下だしミニスカートじゃなかったのは不幸中の幸いだ。多分大丈夫だろう。


ね、クロド。

俺は念話でクロドに尋ねる。


「大丈夫だワン。儂しか見てないワン」


「見たのかよ! ってか、知ってたら教えてよ!」


「視線が低いから見えるワン。人魚だし、本人も気にしてないから、そんなモノかと思ってたワン」


「何の話ですかー?」

ルアが不思議そうに聞いてくるが。


「いやいや、何でもない、何でもない」


誤魔化す俺は、ルアに服屋さんで下着と替えの服を買って来る様に言った。


勿論、付き合いませんよ。

一人で行かせて、店の前で待ってます。


女性の下着売り場に、入って行く勇気はありません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る