第126話 トティとリーマラ2

トンワシンにある冒険者ギルドの職員が、トティとリーマラにタクヤが固まった時の事を説明した。


「ふ~ん、そうすると、ユウマが怪しいと、そう言うんだね。でも証拠は無いと……」


トティが職員に尋ねる。


「はい。前後の状況からすると彼しか考えられませんが、証拠はありません」


「はん、タクヤの自業自得だろ! この表情、この姿を見れば分かるよ。ギルド内で殴ろうとしたのは明確だよ!」


リーマラは吐き捨てる様に言う。


「そ、そんなぁ……」


エイジが悲しそうにリーマラを見た。


「で、私達に何を依頼したいのかな? こんな現象は見た事も無いので、私達に出来る事は無いと思うが? ユウマくんに直接聞いてみれば良いじゃないか」


トティが職員に尋ねる。


「ユウマさんはあの日以来、この都市から居なくなりました。なので、その行方を探して欲しいのと、お会いしたらタクヤさんを元に戻す方法を、聞いていただきたいのです。ユウマさんと顔見知りの冒険者は、この都市にはトティさん達しかおりません。ギルドとしても、タクヤさんを助けたいので、何とぞ……」


「タクヤの事は心配だが、ユウマくんと顔見知りと言っても、都市の入口で初めて会って、ギルドに案内しただけだからなぁ。行く宛ても知らないしねぇ」


「何とかお願いします。タクヤを助けてください。お願いします。」


エイジ何度も頭を下げる。


「私達に言われてもねぇ。自分達で探してお願いすればいいじゃん」


リーマラはエイジのお願いを突き放す。


「エイジさん以外のパーティーメンバーは、ユウマさんを探し回っていますが、見つかりませんし、他の冒険者の方は、タクヤさんのこの姿を見ているので、恐怖で尻込みして、誰も探してくれません」


「まあ、この姿を見て、下手したら自分もこうなるかも知れないと思えば……、怖いだろうね」


「いや、無理だよ。せめて場所が分かれば、聞きに行く事は吝かではないけど、探してって言うと、どのぐらい期間が掛かるか分からないでしょ? その分の日当をギルドが用意出来るとは思えないけど? 私達も解決出来る見込みがあれば、やってみる価値があるけど、期間を掛けて解決出来ないかも知れない依頼受けたくないな」


リーマラがクールで現実的だ。


「そうですが……」


職員は、費用的に難しい事は分かっているみたいだ。


「何とかタクヤを助けてください。内のパーティーでは、このぐらいが精一杯ですが、何とか……」


エイジは懐から金貨3枚を出して、テーブルの上に置いた。


エイジ達が出せる全財産であろう事は分かっているが、そんな少額の報酬で依頼を受ける事が出来ないので、悲しそうな顔で金貨を見詰めるトティ。


その時、部屋の扉急に開いて、別の職員である受付嬢のセビヨンが入って来た。


「ユウマさんの行方が分かりましたー! アカリフォルニの冒険者ギルドにいるそうですー。しかも、『海の洞窟』を攻略したんだってー!」


「「「「ええええええ!」」」」


部屋の中にいた4人は驚く。


「へぇ、私はアカリフォルニに行っても良いわよ。タクヤの事は聞くだけ聞いてみましょう。但し、タクヤが元に戻るかどうかは、分からないからね」


リーマラがそんな事を言い出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る