第125話 宴会
シーサーペントが目の前であっと言う間に解体されていく。マグロの解体ショーより鮮やかな手並みだ。まるで初めからそうなる運命だった様に、淀みなくそしてリズミカルに、踊っている様にも見える、迷いのないナイフ捌きから目を離せない。
「よお、どうした? こいつは宴会用に酒場に運んでおくよ」
解体所のトンエリからそう言われるまで、無言で見とれていたみたいだ。
「い、いえ、何でもないです。……見とれてました」
「ははは、それはそうと照れるなぁ。じゃあ、またな」
そう言ってトンエリは解体後のシーサーペントをアイテムバッグに収納し、解体所の奥に消えた。
その後ろ姿をボーッと見ていた、俺と人魚のルアとブラックドッグのクロド。
その後、冒険者ギルドの酒場で宴会が始まった。
「Aランク冒険者であるユウマさんのぉ、『海の洞窟』攻略を祝ってぇ~、かんぱ~い!!」
「うぉおおおおおお」
「おめでとう!!」
「えー、酒と料理はギルドから提供しますが、本日はユウマさんのご厚意でー、なんと! シーサーペントの肉をご提供いただきましたー、拍手ぅ~!」
パチパチパチパチ……。
「おおおおおおおおお!」
「ええええええ!シーサーペント?」
「マジかぁ」
「すげぇ」
「俺、初めて食べるよぉ」
「楽しみー!」
「ゴチになりまーす」
「ありがとー」
シーサーペントの焼き肉は最高に美味しく、大好評で、ルアとクロドも大満足で、大盛り上がりの宴会が行われるのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ちょっと前の、トンワシンの冒険者ギルドにて……。
トティとリーマラが暫くぶりで依頼を終えて帰って来た。
「あ! トティさん、リーマラさん」
トティとリーマラの顔を見て、駆け寄る冒険者の男。
「トティさん、リーマラさん、帰ってそうそうすいません。お願いがあります、どうか聞いてください」
「ん? タクヤの仲間の……」
「名前忘れた。あは」
「エイジです。相談させてください。」
「エイジ、あぁエイジだ」
「ん~、依頼の報告をしたら時間を取るから待ってて」
トティとリーマラは受付で依頼の報告を終えると、エイジと冒険者ギルドの職員に案内されて、ギルドの一部屋に入った。
その部屋の真ん中には、ユウマに封印された冒険者タクヤがいた。
今にも殴り掛かるポーズで固定されていたタクヤは、トティが見た事のない醜くく歪んだ顔で、『てめえ!』と叫んでいるかの様に、口を大きく開けたままだ。
「タクヤ……?」
「何があった……」
「前回、トティさんとリーマラさんがギルドに訪れた日に、こんな状態になって……」
エイジがトティに説明するが、段々声が小さくなり口ごもる。
「元に戻らないのです」
ギルド職員がエイジの説明を引き継いだ。
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