第117話 アザラシ?

ダンジョンマスターは、空間把握で確認した時にセルキーと表示されたので、どんな種族だろうと思ってたら、アザラシ!!


アザラシがダンジョンコアの後ろから顔だけ出して、此方を見ていた。


「君がダンジョンマスターだね」


俺はアザラシに声を掛けて見た。


「……」


アザラシは無言で俺を見詰める。


「話せないのか、取り敢えずこれは貰っていこう」


俺がダンジョンコアに手を伸ばすと。


「ちょ、ちょっと待って下さい。それを持って行かれたら……」


アザラシが喋り出した。


「喋れるんだね。持って行かれたら、何だい?」


「持って行かれたら……、ダンジョンが無くなります。」


「それは、拙いのかな?」


俺がクロドに聞くと。


「うむ。ダンジョンは近隣の都市の経済を支えているから、無くなると困るワン」


とクロドが答えたので、ダンジョンコアに伸ばしていた手を元に戻して、再びアザラシに尋ねる。


「ダンジョンを攻略すると、何か貰えると思っていたのだけど、何も無いのは、何でかな?」


「リヴァイアサンを倒して無いので、報酬の宝箱が出ないのです」


「そうかぁ。でもリヴァイアサンって元々はダンジョンのモンスターじゃ無いんだろ、喋るし自我もあったし、そんな存在を長年閉じ込めていたのは酷いと思わないかい? その上、その者を殺さないと貰えないっておかしくないかな?」


「はぁ、確かにそうなのですが、初めてダンジョンを作成した時に近くにいたのと、とても強い存在だったので、ボスになって貰ったのです。そのお陰で今まで誰もこのダンジョンをクリア出来ず、ダンジョンが成長する事が出来ました。そしてダンジョンのルールでボスを倒した者に報酬を与えるのです」


「それは、君の考えであって、リヴァイアサンの意志では無いよね? 少なくとも、リヴァイアサンはこのダンジョンから出たいと思ってたし、途中で操られて俺に襲い掛かってきた様に見えた」


「ボスに指定していましたからね。その役柄を全うして貰いました」


「君の考えは自己中心的で理解出来ないよ。う~ん、そのダンジョンのルールで言うと、ラスボスを退けてダンジョンマスターの部屋に到達した者はどうなるんだ?」


「……」


「黙りかぁ。都合が悪い事は話さないんだね。何れにしても君をこのまま放置は出来ないな。直接俺達に危害を加えようとはしなかったので、手出しはしないで会話をしてみたが、俺達とは相容れない存在の様だし、リヴァイアサンを操って俺達を殺そうとしたしね」


「どうしようって言うの?」


「判断に迷うね。取り敢えず封印かなぁ。君が死んだら、ダンジョンがどうなるか分からないし……」


「何時まで?」


「さぁ? 永遠かもね」


「ちょ、ちょっと待ってください。そんな事されたら……」


「されたら?」


「……報酬を差し上げます。それで許してください」


「いや、ダメだろう。物を貰って見逃すなんて、最低の奴がやる事だ」

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