第111話 人魚2
俺は人魚を助けようとしている。
冒険者5人が人魚を拘束し連行していた、捕まっていた人魚は明らかに喋り、知的な生物に見えた、その人魚が泣いて悲しそうに助けを求めていた。しかも捕まえた冒険者がどう見ても悪党にしか見えない。
俺は人魚を見るのは初めてで、帝国では人魚がモンスターなのか、獣人や魚人の様に人間と同じ扱いなのか知らない。
もしかしたら、帝国では人魚を捕まえても罪にならないのかも知れない。その場合、人魚を助ける為に、戦えば俺が犯罪者になる可能性がある。他人のモノを暴力を持って奪うのだ。通常は強盗になるだろう。
しかし、人魚の涙を見てしまった俺は、見逃す事が出来なかった。
本当は人魚を助けて、冒険者達を殺す事が一番良いのだろうが、法律に違反していないかも知れない人達を、罵声を浴びせられた事を理由に殺すほど、覚悟は出来ていない。
そこで、誤魔化しになるが、俺に罵声を浴びせた事を理由に喧嘩を売る事にした。寧ろ、売られた喧嘩を買うパターンかな。
その結果、人魚を逃がそうと思っている。
「ははは、死ねぇ!」
シュッ。
冒険者の1人の水中スクーターから銛が発射された。
ガコン!
俺が事前に展開していた亜空間が銛を弾く。
「む? 障壁の魔法か?」
「生意気な」
殺すつもりで襲って来たって事は、殺しても問題ないか?
冒険者達は散開して上下左右に分かれた。
「障壁の範囲がどの程度か見てやる」
「今更、謝っても遅いぞ」
「死ねぇ」
上下左右から銛が発射されたが、亜空間は俺を覆う様に展開しているので無駄だけどね。
カン!カン!カン!カン!
弾かれる銛。
「ちっ、どうなってんだ?」
「ビビって攻撃出来ねぇ癖に……」
色々考えていたら、どうやら怖がってると思ってる様だ。
「くそっ、勝負はお預けだぁ」
逃げ去ろうとする冒険者達。
逃がす訳無いだろう。
俺は冒険者達を封印した。そして、人魚を引っ張っていた縄の中心部分を空間削除で消して、人魚の両手を拘束していた縄を空間収納した。
自由になる人魚。
ついでに冒険者達の水中スクーターの動力部分を空間削除で消す。これで封印が解けた後に泳いで帰らないといけなくなり、銛も発射出来なくなった。
封印された冒険者達は海中を漂っている。
運が良ければ帰れるが、途中でモンスターに教われたら、かなり危ないだろうなぁ。
「さあ、君は自由だ。逃げなさい。」
人魚は無言で俺を見ていた。
それ以上、特に掛ける言葉は無いので、俺は人魚にそう言うと、ブラックドッグのクロドと一緒にダンジョンの奥に進んだ。
暫く進むと、人魚が俺達を追って来るのが分かった。
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