第112話 人魚3

俺とブラックドッグのクロドが、ダンジョン『海の洞窟』の奥を目指して進んでいると、後を人魚がついてくる。


俺が冒険者達から助けた人魚だ。


「クロド、ちょっと待とう」

「分かったワン」


俺達は水中スクーターの動力を止めて、人魚が追い付くのを待った。


すると、追い付いた人魚は距離を置いて止まり、黙って此方を見ている。


「どうした? 元居た場所に戻って良いんだよ」


俺が人魚に話し掛けると。


「助けてくれて、有難う……」


「いえいえ、どういたしまして……、お礼を言いに来たのかい?」


「僕を連れて行ってください。海の中では、きっと役に立ちます」


(僕っ娘、キターーー!)


「ふーむ、理由を聞いても良いか?」


「……」

人魚は無言で俯く。


「まあ、話したく無いなら、無理にとは言わないよ。でも、俺達の目的は知らないでしょ」


「この洞窟で狩猟をするんじゃないの?」


「このダンジョンの攻略さ」


「攻略! ……そ、そうなんだ。じゃあ、水竜様を倒すの?」


「このダンジョンのボスがその水竜様なのかな?」


「そうだよ。この洞窟の最深部に水竜様が居ると言われているんだ」


「成る程、じゃあ水竜様を倒すだろうね。それでもついてくる?」


「はい。ついて行きます」


「ふむ、その後はどうするの? 俺達はこのダンジョンを出て、人間の都市に帰るんだけど?」


「……」


「じゃあ、このダンジョンを出るまでなら、同行しても良いよ。君は海から陸に上がって、俺達に同行できなそうだからね」


「やった! 有り難う」


「と言うことで人魚を同行させる事にしたけど、良いよね。クロド」


「決めてから相談されても困るワン。まあ、問題はないワン」


「ははは、そうだね。ごめんごめん。俺はユウマだ、そして相棒のクロド。宜しくね」


「僕はルアリエ。ルアって呼んで」


「分かったルア、じゃあ行こうか。ついてきて」


俺とクロドが水中スクーターを動かして、進み出すと、ルアも俺の横を凄い速さで泳いで来た。


暫く進む。そしていつもの様に、収納範囲のモンスターを脳収納で倒して、亜空間に収納していく。


「え? マーマン達が、消えていく……」

驚くルア。


「そうそう、俺の能力なんだよ」


無人のダンジョンを進む様に、ただ前に進むだけだ。


「次は右だよ」

とルアが教えてくれるが。


「うん、分かってる」


「え? 道が分かるの?」


「この階層に道は把握した。問題ないよ」


迷わず進む俺達に驚きながらついて来るルア。


「さて、そろそろ下に降りる穴があるぞ」


この階層には階段はなく、下に降りる穴が空いていた。


「下に行く道も知ってるのね」


「そうだよ。これも俺の能力さ」


俺達は次の階層に降りて行くのであった。

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