第103話 トテイとリーマラ

冒険者は冒険者証を見せるだけで門を通れるので、あっという間に列は進んでいき、トテイとリーマラの番になった。


俺とブラックドッグのクロドもトテイ達と話をしていたので、一緒に冒険者証を門番に見せた。


「え! トテイさん 、も、もしかしたら彼氏ですかぁ?」


門番の男がトテイに尋ねる。


「な訳ないじゃん。偶々列が一緒だったのよ。初めてこの都市に来たって言うから、一緒に冒険者ギルドまで行く事にしたの」


「ほっ」

あからさまにほっとする門番の男。


トテイとリーマラは人気があるらしい。気になって周りをを見ると、俺を睨んでる冒険者の男が多いのに気が付く。


やべぇ。


初っぱなから敵を作っちゃったみたいだ。


トテイとリーマラだって、俺をギルドに案内すると言うよりは、ギルドまでクロドをモフりたいだけなのに……。はぁ……。


俺達は冒険者ギルドに入った。


トテイとリーマラが冒険者ギルドに入ると、冒険者達が一斉に注目したのが分かった。


男子だけじゃ無いんだよ。トテイは長身でボーイッシュでモデルの様な美人だ。女子からも憧れの視線が多い。


これ、マジやべぇよ。


「ちょっとぉ、トテイ様と一緒にいるあの男誰よぉ!」

「リーマラさんと話してる奴誰だ」

「おい、誰か聞いてこい」

「あの黒いワンちゃん可愛い」

「私もモフりたーい」


一部クロドに対する好意の声があるが、殆ど俺に対する非難の声だ。


1人の男が近付いて来た。


「トテイさん! お疲れ様です。その男ともしかしたらパーティーを組んだのですか?」


「ああ、タクヤか、お疲れ。ユウマくんとは門を入るときに一緒になっただけだよ。初めてこの都市に来たから冒険者ギルドに案内しただけさ。皆勘違いしてるみたいだから、説明しておいてくれ」


それを聞いてホッとするギルド内の冒険者達。


「なーんだそうですよね。トテイさんとリーマラさんが余所者とパーティーを組むなんてあり得ないですよねぇ」


「タクヤ! 何で私達のパーティーについてお前に指図されなきゃいけないんだ! いい加減にしろよ!」


リーマラがタクヤの襟首を掴んで突き飛ばした。


倒れるタクヤ。


「いえ、そんなつもりで言ったんじゃ無いんです。誤解です」


タクヤは倒れながら言い訳をしていた。


「全くここの冒険者達は煩いなぁ」

リーマラは少し怒っていた。


「ユウマくん、ごめんよ。何だか不快な思いをさせた様だ。私達はここで分かれるが、何かあったら何時でも相談してくれ。クロちゃんもまた会おう」


トテイはそう俺に言うと受付に向かった。


受付に並んでいた列の冒険者達がトテイとリーマラ見ると、列の順番を譲りあっと言う間に列の先頭に行った2人。


2人は横入りになるからと断っていたが、皆勝手に列から離れて、2人を先頭にしていたので、よっぽどここの皆から慕われている事が分かった。


問題はこいつだな。


倒れていたタクヤは立ち上がりながらも俺を睨んでおり、立ち上がると俺に近付いてきた。

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