第97話 VS風月の戦乙女

「あっはっはっは、お前等が俺達を捕まえるって? 足止めにもならんだろう」


黒い鬼の面をつけたミナトが大笑いをして、『風月の戦乙女』に毒づく。


「3人程度で私達を倒せると思ってるの?」


『風月の戦乙女』のリーダーであるカノンが、ちょっとビビりながらミナトに言って身構えた。


「バッカじゃないのぉ! あんた達なんて屁でもないわ。あっはっは」


黒猫の面をつけて黒いローブに身を包むアオイは杖を掲げた。


ヒマリは黒狐の面をつけて、無言で弓を構えていた。


アオイが杖を横に振ると、『風月の戦乙女』のいた場所に炎の壁が立ち上がった。


「きゃああああああ!」


飛び退き転がるカノン達とメイ。


アオイが杖を先程と逆方向の横に振ると炎の壁が消えた。


ヒマリは矢を放つ瞬間、『風月の戦乙女』の後ろに隠れていたメイを見つける。


「メイ?」


ヒマリは矢を放つのを止めた。


「メイ? 本当だ! 何やってんだお前?」


ミナトもメイを認識した。


炎の壁で体勢を崩した敵をヒマリが矢で撃ち抜く連携だったが、メイがいた事で九死に一生を得た『風月の戦乙女』達。


「何で、黒の群盗がメイを知ってるのよぉ? メイ、知り合い?」


カノンは立ち上がりながらメイに尋ねる。


「盗賊に知り合いはいないわ!」


(誰よ? 私を知ってるなんて……)


メイも震えながら否定するが、ミナト達を注視する。


「ふっ、ちょっと驚いたが、関係ねぇ。皆殺しだぁ!」


ミナトは抜いていた剣を振り上げカノンに斬りかかった。


カノンはミナトの剣撃を躱す。余裕で躱した訳ではなく、無様に体勢を崩して必死に躱した。それほど、ミナトの踏み込みと剣速は速かった。


ドガッ!


ミナトがカノンを蹴り飛ばした。


「う゛っ……」


「あっはっは、弱っちいなぁ!」


ミナトは無造作に剣を振る。『風月の戦乙女』のカエデが剣で受けるが、弾き飛ばされた。


「ちょっとぉ! ミナト邪魔よぉ」


杖を振り上げたアオイが、ミナトが動き回り、的を絞れないで苛立ち、思わず声を上げた。


「ミナト! あなたミナトなのぉ?」


メイは大声をあげた。


「おう、そうだよ。俺はミナトだぁ!」


黒鬼の面を外そうとするミナト。


ガシッ……。


「アオイ、これ外れねぇぞ?」


「はぁ、馬鹿じゃないの? この紐を外せば直ぐに……。は、外れない……。ナニコレ?」


アオイも黒猫のお面を外そうとするが、外れない。


「え? だってただのお面だよね? ……何よぉ、これぇえええええ!」


ヒマリも黒狐の面が外せない。


「今よ!」


『風月の戦乙女』のマナミがアオイを、ワカナがヒマリを襲う。


後衛のアオイとヒマリは、前衛のマナミとワカナとの接近戦に手こずる。


カノンがミナトの隙をついて、ミナトの剣を叩き落とすと、カノンとミウとメイの3人が、ミナトと乱闘になった。


腐っても元Sランクのミナトはそれでも、3人の剣撃を躱し、受け流し、突きや蹴りを繰り出す。


「くっそぉ、お前達、いい加減にしろよぉ」

叫ぶミナト。

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