第96話 ユウマ登場

黒の群盗の砦内では、土蜘蛛達に背後から襲われて騎士達、冒険者達は劣勢を強いられていた。


「重装兵は盾で防げぇ! 弓兵と魔法兵は重装兵の後方へ回れぇ!」


騎士団ベーマタは現場に到着すると、土蜘蛛を3匹槍で突き刺し、味方を鼓舞し隊列を整えさせようと叫ぶが、混乱した騎士達は中々隊列を整えられない。


むしろ、冒険者達の方がパーティー別に臨機応変に戦えているので、ましな方であるが、それでも背後から襲撃されてきた影響を覆す事は出来なかった。


孤軍奮闘と土蜘蛛達を葬るベーマタだが、ベーマタから離れたところでは、また一人騎士が土蜘蛛の牙に命を落とす。


「くっ、踏ん張れ! 騎士の誇りを見せてみろぉ!」


叫ぶベーマタ。


外壁の上から戦況を見守るアラクネと元騎士団情報部門のトヨシモ。


「よしよし、この調子で騎士団と冒険者達を殲滅するのよ」


「危険な敵はベーマタ一人。何とか間に合ったわね」


「あ! ちょっとぉ、黒犬とあの男は来ないって言ってたじゃない!」


「来てないでしょう?」


「じゃあ、こっちに向かってくる奴は誰よ? 私は逃げるわよ」


「ちっ、後少しだったのに……」


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【ユウマ Side】


ブラックドッグのクロドの背に跨がり、黒の群盗の砦に向かう俺。


「砦で大規模な戦闘が行われてるワン」


「土蜘蛛もいるね。黒の群盗と蜘蛛の牙は繋がってたのか。クロド、急ごう」


「分かったワン」


クロドは走る速度をあげた。


遂に到着した黒の群盗の砦、門は壊れていて争う音が聞こえる。


砦内の空間を把握してっとぉ。


ん? ミナト達がいない。


取り敢えず争いを終わらせておこうか。


俺は空間内の土蜘蛛を全て封印した。


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【ベーマタ Side】


「な、何だぁ?」

「土蜘蛛の動きが止まった」

「何だか分からんが、今のうちだ」

「土蜘蛛を倒せぇ」


騎士達と冒険者達は一斉に攻勢に出た。というか、止まって動かないモンスターを倒すのは誰でも出来る。


「うぬ、これは? 蜘蛛の牙のアジトの時と同じだ。ユウマが来たのか」


ベーマタは砦の門に目を向けると、クロドに跨がり悠々と歩いて来るユウマの姿が見えた。


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その頃のミナト達。


「急げ急げ、この砦から離れるぞ」

ミナトが砦の逃げ道である洞窟から出ていた。


「ふう、酷い目にあったわ」

アオイはローブの埃を叩き落とした。


「サキヨマさん、達は見えなくなったわね」

ヒマリは遠くを眺める。


ガサガサ……。


「黒の群盗! 逃がさないわよぉ!」


『風月の戦乙女』のリーダーであるカノンが剣を構えて、草むらから飛び出した。


その後ろには『風月の戦乙女』のメンバーと複数の冒険者、そして元ギルド受付嬢のメイがいた。

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