第91話 籠城2

黒の群盗の砦を望む騎士団と冒険者達。


「ベーマタ様、盗賊どもは籠城を選んだ様です」


騎士団の一人が騎士団長のベーマタに報告しにきた。


「報告ありがとう。ちっ、籠城か。厄介だなぁ。攻城兵器なんて持って来てねえぞ」

舌打ちするベーマタ。


「籠城する意味が分かんねぇなぁ、籠城しても応援がないと意味がないだろう」

と『豪勇の斧』のリーダーであるフドウが呟く。


「時間稼ぎか? 応援がいるのか?」

と『黒紅の無頼』のリーダーであるショウゴも訝しむ。


「周囲を包囲だ。逃がすなよ!」

騎士団長ベーマタは騎士団に指示した。


「はっ!」

敬礼して配置に走る騎士達。


「俺達は侵入出来るところが無いか、探って来よう」

ショウゴが言うと。


「俺はひと当てしてくるぜ」

フドウが斧を手に持つ。


フドウが待機していた冒険者達に向かって叫ぶ。

「弓使いと魔法使いは援護を頼むぜ!」


『豪勇の斧』のメンバーはゆっくりと砦に進み、その後を弓使いと魔法使いの冒険者達がついて行く。


砦の門の正面に距離を取って立ち止まるフドウ達。


砦の門の上には元騎士団副団長のトカツモが、黒いお面を着けて待ち構えていた。


「弓隊構えぇ!」

十数人と盗賊の弓使いが弓を構え矢を番える。


「ふっ、盗賊風情がぁ! 行くぜぃ!」

フドウが走り出した。


「射てぇ!」

トカツモの号令に矢が雨のように降り注ぐ。


ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン。


フドウは盾を矢の軌道に構え走る。


キン、キン、キン、キン。


矢が盾に当たり跳ねる。


そのままフドウが走るが……。


「ちっ、矢は効かねえか。魔法使い準備はいいかぁ!」

トカツモは弓使いの後ろにいる盗賊の魔法使い達にめをやる


魔法使い達は無言で頷く。


「レディ……、ファイヤー!」

トカツモがフドウを指差す。


数多くのファイヤーボールがフドウに殺到した。


「くっ、ヤベぇか」

フドウは立ち止まり、前方から身に迫る炎を避ける為に、斜め後ろに飛び退来ながら斧を投げた。


転がるフドウの斜め前に炎の玉が次々と着弾していく。


「あちっ!」

片足立ちで起き上がり砦の門を見詰めるフドウ。


フドウの斧は回転して門の上の盗賊まで飛んでいく。


「うぉっとぉ!」

カツン!!


門の上ではトカツモが盾を構えて、斧を受け流した。


フドウの斧はトカツモの盾に当たった後も回転と速度はそのままでフドウの元に戻る。


「単独では無理だって」

『豪勇の斧』のテツワンがフドウの後ろに来ていた。


「ああ、ただの盗賊じゃねぇな。統率が取れてやがる」


フドウは戻って来た斧を掴むと、門を睨みながら、ベーマタ騎士団長のいる本陣まで、ゆっくりと歩き出す。


「弓使いや魔法使いの数も多い、とてもドロップアウトした盗賊風情じゃねえぞ」


「怪しいなぁ、他国の兵士っぽいな」


『豪勇の斧』のカイリキとコンゴーも炎の魔法から退避し、フドウとテツワンの後についていく。

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