第92話 籠城3
黒の群盗の砦は山の地形を利用した山城になっていた。その為、騎士団での完全な包囲が出来なかった。
騎士の一人からベーマタ騎士団長にその旨の報告を受けた後、ベーマタ騎士団長と『黒紅の無頼』のリーダーであるショウゴと、『豪勇の斧』のリーダーであるフドウの3人で、今後の方針について話し合っていた。
「ベーマタさん、包囲は難しいらしいね。このままでは兵糧責めも出来ないし、いざとなったら逃走を許す事になるんじゃないか?」
ショウゴがベーマタ騎士団長に話掛けた。
「うむ、数はこちらの方が多いのだ。こちらの兵糧があるうちに総攻撃を掛けようかと思っているよ」
「総攻撃に反対する気はねぇが、奴らは盗賊と思えない装備と連携、実力があるから、細心の注意が必要だと思いますぜ」
フドウが慎重になる様に意見を言う。
「豪放磊落のフドウらしくねえなぁ」
ショウゴが茶化すと。
「ふん。仲間の命は軽くねえんだよ」
「まあ、それはそうだ。そこでだ、うちのリュウセイが砦に潜り込む算段を着けた。少数精鋭の探索者が侵入して、内部で陽動を起こして、総攻撃するってのはどうだい?」
とショウゴの提案にフドウも賛同する。
「お! それは良いアイデアだ。それでいこうぜ。うちのタンチも参加させるぞ」
「済まんな。騎士団の情報部門がおかしな事になってるから、苦労を掛けるな」
ベーマタ騎士団長はトヨシモが辞めた後の騎士団情報部門が、どうもチグハグな動きをしている様に感じて、今回は同行させていない。偵察は冒険者に任せていたのだ。
騎士団と冒険者は砦の周囲に位置取り、総攻撃の号令を待つ。
『風月の戦乙女』のメンバーとメイも砦後方の配置で参加していた。
「メイ、本当に大丈夫? あんたって冒険者の経験あったっけ?」
「多少あるわよ。それより何だかインスピレーションが沸きそうだわ。私は戦いの中で次の作品のヒントを得るのよ」
メイは新作を強く求められていて、相当追い込まれていた。『蜘蛛の牙』討伐時に作品を書けた事から、この戦いに賭けていた。
一方砦の中では、ミナト達とサキヨマ達が焦っていた。
「おい、サキヨマさんよ、トヨシモはどこに行った? 応援が来るって言う話はどうしたんだぁ!」
「知らんよ。トヨシモなんて、いつも消えたり現れたりしてるだろ。いつもの事じゃないか」
「サキヨマさんって、トヨシモさんの彼氏なんでしょ? 知ってるんだからぁ。居場所を知らない訳ないでしょ。これが証拠よぉ!」
魔法使いアオイが『禁断の騎士団』と『禁断の騎士団2』をサキヨマに見せた。
隣で弓使いのヒマリがサキヨマの表情を、そして動きを見逃さない様にワクワクしながら注視している。
「彼氏? 何言ってんだ。んな訳無いだろう。俺は男だぞぉ! 何だその本は?」
サキヨマはアオイから2冊の本を奪う。
「……」
サキヨマは2冊の本を流し読みして……。
2度見して、目を見開いて、手が震えて……。
「な、なんじゃこりゃああああああ!」
砦に響くサキヨマの叫び……。
ここにも腐女子がいた!!
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