第90話 籠城

北の山にある黒の群盗のアジトにて。


バタン!


「ミナト隊長! 大変だぁ!」


ドアを開けて、盗賊の1人がミナトの部屋に入って来た。


「おい! ノックぐらいしろ! 馬鹿たれがぁ」


ミナトが手近にあったコーヒーカップを投げつけた。


ガシャン!

「ひぇ」


コーヒーカップが男の顔の直ぐ横を飛んで、壁にぶつかって壊れた。


「き、騎士団と冒険者が大勢でこの砦に向かって来ますぅ~」


「なにぃ、人数は何人だぁ!」


「い、いっぱいですぅ~」


「数も数えられんのかぁ。馬鹿たれがぁ!」


こんどは受け皿をフリスビーの様に男に投げたミナト。


ゴン!ガシャン!

「う゛……」


受け皿が額に当たって仰け反る男。


「会議室集合だぁ! 今直ぐ、幹部全員を会議室に呼んで来い!」


「は、はいぃ~」

男は慌てて部屋を出ていく。


ミナトは会議室にのっしのっしと、肩で風を切ってがに股で歩いて行く。




会議室には、元焔の剣のメンバーであるミナト、魔法使いアオイ、弓使いヒマリと、元騎士団のサキヨマ、トカツモ、リマサノ。


そしてトヨシモが居た。


ミナトが口火を切る。

「ヤベーぞ、騎士団と冒険者が攻めて来やがった。いよいよ本腰を入れて俺達『黒の群盗』を討伐する気だ!」


「ちっ、何人で来たのよ?」

アオイが舌打ちしてミナトに問う。


「それがよぉ、斥候の奴が馬鹿たれでいっぱいとか抜かしてんだ」


「はぁ? 10人と100人と1000人じゃ対応が違うでしょ? 至急もう一回行かせて! 別の斥候によ!」


「む、それはそうだが……」

サキヨマはイヤな顔をしている。


(何でボスの俺が指示を出さなきゃいけねぇんだ?)と思っているが、アオイに反論出来ないミナト。


「大凡300人よ。騎士団が200、冒険者が100ね」


トヨシモが口を挟む。


「お! トヨシモ、ありがとう」


「で? どうすんの?」

アオイがミナトにぶっきら棒に言う。


「う! ……」

(それをみんなに相談しようとしてんじゃねぇか)と思うミナト。


「迎撃だぁ!」


「はぁ? あんたバカぁ? 死にたいの?」


「う゛……」


「確かに、3分の1で迎撃はないな、籠城か?」


元騎士団副団長のトカツモが割り込む。


「イヤ、籠城は応援が来ないとジリ貧だ。迎撃しかねぇだろう」


元騎士団長のサキヨマが意見を言う。


「ほら! 迎撃しかねぇんだよ!」


ミナトはサキヨマの言葉に自信を持って胸を張る。


「籠城ね。応援はあるわ。ふっふっふ」

トヨシモの言葉に全員驚きトヨシモを見る。


「応援?」

「誰がぁ?」

「何処から?」

「いつ?」

「何で?」

サキヨマが、アオイが、サキヨマも、トカツモも、リマサノも次々とトヨシモに疑問をぶつける。


因みにヒマリは黙ってトヨシモを見ていた。


「ヒ・ミ・ツ……」

ウィンクするトヨシモ。

ゲンナリするサキヨマ。


「おいおい、それがハッキリしねぇと、安心出来ねぇぞ!」


ミナトはトヨシモに食って掛かる。


「あら? 乙女の秘密は追求しちゃ、ダ・メ・ヨ!」


「乙女の秘密って……」


「ガタガタ言うんじゃ無いわよぉ! あんた達を拾ってやったのは誰ぇ? 私よぉ! 私が応援が来るって言えば来るのよぉ!」


「はひぃー」

トヨシモの剣幕に何も言えず、了承する、黒の群盗の幹部達であった。

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