第89話 進軍

すいません。投稿遅れました。

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都市の入口門の前で出陣式が行われた。騎士団が無言で整然と並び、冒険者達が無駄話をしながらダラダラと並んでいた。


「諸君! 都市の平和を脅かす群盗を倒すため、力を貸してくれ! 出撃だぁ!」

騎士団長ベーマタの号令が響く。


「はい!」

騎士達が揃って右手を額に当てて敬礼を行う。


騎士達が出発した後で、今回冒険者達のリーダーとなった『豪勇の斧』のフドウが、「野郎共、行くぜぃ!」と声を出して、騎士団の後に続く。


「おー!」

半分ぐらいの冒険者達が右腕の拳をあげたて、フドウの後をついていく。


黒の群盗のアジトがある北の山は、森を抜けた先にあるが、その森に行くまでも日数は掛かる。


騎士団では、騎馬と馬車に乗り進軍するが、冒険者達は馬を自前で用意出来る者が少ない為、殆どが馬車に乗って移動しているが、通常の馬車を人数分用意する事が難しかった為、1部は荷馬車に乗っている者もいる。


しかも乗員オーバーで詰め込まれている馬車も多く、スピードは遅めになる事から、遅い馬車に合わせる全体の進軍も遅めである。


その中には『風月の戦乙女』が乗る馬車もあり、この馬車には女子だけが乗っている。しかし、この馬車も8人乗りの馬車に10人詰め込まれて乗っていた。


「もう、キツいよぉ」

カエデがお尻をぐりぐり動かす。


「ちょっとぉ、お尻を動かさないでよぉ。モグモグ」

ワカナがカエデに文句を言いながら、ドライフルーツを食べていた。


「それちょーだい」

マナミがワカナのドライフルーツを一つつまんで口に入れる。


「これ、美味しいじゃん」


「あら、あげるって言って無いけど?」


「良いじゃん」


「おひとつどうですか?」

そんなマナミにドライフルーツが入っている布袋を出すメイ。


「メイ、ありがとう。あんたも変わってるわね。冒険者でも無いのに、こんなところに潜り込むなんて」


「取材ですよ。取材」


「取材?」


「メイはねぇ、『禁断の騎士団』の作者なのよ」

リーダーのカノンが小声でマナミに囁く。


「え! 『禁断の騎士団』ってメイさんが書いてたんですか?」

窓から外を見ていたミウが急に振り向く。


「ちょっとぉ、ミウ! 声が大きいわよ。メイに頼まれて、『風月の戦乙女』の見習いとして紛れ込ませたんだからぁ」


カノンはミウの耳に口をつけて、周りに聞こえない様に注意する。


「ちょっとぉ、カノン! 今の話、聞こえたわよ。メイ! 『禁断の騎士団』の作者って本当?」

一緒の馬車乗っていたアヤカが目を見開き、カノンとメイに顔を寄せて訊ねる。


「……本当です」

メイが顔を下に向けて答えた。


「マジ!! 私ファンなのよぉ」

アヤカがメイの両手を握る。


「え! 本当ですか?」


「本当だよぉ。サイン貰うわよ。ところで3話目も出るの?」


結局、馬車内の女性冒険者には、バレてしまったのだが、大半がファンだったので、みんなの秘密としてサインを貰う約束で、黙っている事になった。

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