第87話 襲撃

街道を走る馬車。


馬に乗った護衛の冒険者が、数名で周りを警戒しながら進む。


街道沿いにある森の中、木の影に隠れる盗賊達。

「ミナト隊長、来ましたぜ」


「流石、トヨシモさんの情報は完璧だ。あの冒険者達もCランク程度のはず。ヒマリ、アオイ、頼んだぞぉ!」


「任せてぇ!」

アオイがミナトに応え詠唱を始めると、無言でヒマリが弓を引き絞る。


馬車は、ミナト達に近付き、射程距離に入った。


シュッ!

ストッ!


先頭を走る馬に乗った冒険者の額に矢が突き刺さり、馬から転げ落ちた。


ズダダダン!


ズドーン!!

「ヒヒヒィーン」

「うおっ!」


馬車を引く馬に炎の弾が直撃した。


「敵だぁ!」


慌てる冒険者達。


「ひーはー! いくぜー!」

「おー!」


ミナトが剣を抜いて、馬に乗り前方から馬車に襲い掛かる盗賊達。


「くっ、前から来やがった。一人後方警戒で残って後は前に来い! 弓使いは迎撃──」


ヒュン! トスッ!


冒険者のリーダー胸にヒマリの矢が刺さる。


そして、後方からはサキヨマ達の、元騎士団のメンバーを中心とした盗賊達が、襲い掛かって来た。


「後方からも敵襲です!」

「ちっ、挟撃されたかぁ」


冒険者達は慌てる。


サキヨマは馬に乗り槍を持って、冒険者達に突き進んだ。


「うおおおおお!」


ドシュッ!


サキヨマの槍が冒険者達を突き刺す。


「一人も逃すなぁー! 今日は大量だぜぇー! ひゃっはー!」


ミナトの剣も冒険者を切り裂く。


「あ、あんたは? ミナトさん!」


冒険者の一人がミナトに気付いた。


「そうだぜぃー。 俺はSランクのミナト様よぉー。 はっはっはー!」


「元な!」


サキヨマはミナトに気付いた冒険者を、槍で背中から貫いた。


「うるせー! 俺は永遠のSランクだぁ! さぁ、皆殺しだぁ!」


乱戦になり、次々と冒険者達を殺していく、ミナト達。


流石に盗賊の中でも何人か犠牲者は出たが、ミナト達は冒険者と馬車に乗っていた商人を皆殺しにして、部下が乗ってきた馬に馬車を繋ぎ、馬車ごと盗んで行くのであった。


「おーほっほ、盗賊は止められない止まらないわー」


馬車中にあった宝石類を手に入れてご満悦の魔法使いアオイ。


「さあ、アジトに戻るぜぇー!」


「おー!」


ミナトの掛け声に盗賊達は大声で応える。


盗賊の頭にスカウトされたミナトは絶頂だった。計画はトヨシモが立てて、沢山の部下が面倒臭い事は全て行う為、襲撃の時に暴れるだけで、威張ってるだけで良いと言う事もミナトは気に入っている。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


数時間後。


ミナト達が馬車を襲った現場にAランク冒険者パーティー『豪勇の斧』が、駆け付けていた。


「遅かったかぁ」


リーダーのフドウは惨劇の現場を見て、悔しがる。


「匂いは残ってる。後は追えるぜ」

ウェアウルフの男が鼻をヒクヒクしている。


「良し、後を追おう、アジトを見つけて、一網打尽にしてやる」

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