第86話 処罰

村長のトメキチの命乞いは止まらない。何時までも続くが、聞き流してユイナを見る。


ミナトの父ミナオ、アオイの母アオナ、ヒマリの父ヒマルが、1人づつ顔を血だらけにして、倒れていったのを見ているユイナは、何故死んだのか分からず気が狂う程の恐怖が襲う。


「ユウマ! 私を好きにして良いわ、だから私だけ助けて、ねぇ、お願い、良いでしょ。亡霊洞窟での事は謝るわ。でも私は見てただけだし、全てはミナトが悪いのよ」


「ぬぬ、自分だけ助かろうとするとは、儂死んだらこの村は終わってしまうのだ。何とか儂とユイナは助けてくれ。殺さないでくれ」


村長を見詰める


恐怖で目を見開き顔が歪むトメキチ。

震えて止めどなく流れる冷や汗。


「俺の父の命乞いは、聞かなかったんだろう?」


「そ、それは……。あ、謝ります。すいません、すいません、すいません、助けて、何でもするから、金もやるし、お願いだ。頼む! 助けてぇ」


さて、どうするか?

この2人も殺したいほど憎んでいる。

特に村長は両親の仇だ。


しかし、ただ殺して終わりで良いのかとも思ってきた。


ミナト達の親は、明確に殺意を持って襲って来たので、こちらも容赦せず殺せたが、ただ謝るばかりの2人に対して非常になりきれない自分もいる。


かと言って、許すつもりは更々無い。


「良し、殺さない事にしよう」


「おお! ありがとう……」


一瞬ニヤリと笑った表情が見えた村長トメキチ。「甘い奴」と思ってるんだろうな。


「良かったぁ、さあ、身体が動くようにして。ユウマに尽くすわ」


ユイナもホッとした表情を浮かべた後、目を輝かせた。「ここさえ、乗り切れば後はどうとでも出来る」とでも思っている様だ。


「いや、許した訳では無い。ユイナと村長には、死ぬ以上の苦しみを味わって貰う」


「「え!」」


「な、何をする?」


俺はユイナとトメキチを無視して、封印している村人達を見回す。


「この中で俺の父を殺す行為に、直接関わった人がいると思う。また、村長達が俺の父を殺した事を、見て見ぬ振りをした人もいるだろう。村長の仕返しを恐れて反対出来なかった人もいるかも知れない」


村人達は何を言われるか戦々恐々だ。


「しかし、俺の両親がこの村で殺されて、俺と父が村八分の状態にあった事は事実だ。反論や謝罪は一切聞かない。この村の全員を封印する」


村人達は「封印って何?」って顔をしている。


「このまま、身体が動かないまま、固定する。今は顔の表情が動くように見えるが、人形の様に何一つ動かない様にする。しかし、時が止まると意味がないので、思考は出来るようにするので、後悔し反省してくれ」


「私もぉ?」

「何! 儂もか?」


ユイナと村長が声をあげて、村人達も驚愕の表情だ。


「勿論、ユイナと村長も封印するし、ここにいない村人達も封印する。俺と同じ能力の者が現れるまで、何時までも封印されるがいい。俺と同じ能力を持つ者がここに来て封印を解除されるのは、10年後か、100年後か、1000年後か、その前に死ぬかも知れないがね。更にユイナと村長はこのまま封印解除される可能性があるので、腕と足を貰う」


「いやあああああああ──」

「止めてくれええええ──」


煩いので、ユイナと村長の声を封印して、腕と足を収納した。


そして、ユイナと村長、村人達から表情も奪い、ここに来ていない村人達も封印して廻り、村全体も封印した。


その後村を離れて、野営地でクロドに警戒を頼み、俺は疲れ切って泥のように眠った。


クロドが隣で横になり、優しく俺を見守る。

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