第82話 故郷

『黒の群盗』のアジトの一室。


「盗賊は3日やったら辞められないわね」

魔法使いアオイは豪華なソファーに座って、財宝のアクセサリーを手にしていた。


「盗賊は気楽な稼業ときたもーんだ」

酒を飲みながら、奴隷の女を侍らせる剣士ミナト。


「はぁ、これで良いのか?」

弓使いヒマリは疲れた表情で眉を顰める。


「大丈夫、大丈夫! ドンと行こうぜ、ドンとな! あっはっは」

ミナトの馬鹿笑いに、なお一層心配のヒマリだった。


「はぁ……」


「次の標的が決まったぞぉ」

その時、サキヨマとトカツモ、リマサノの3人が扉を開けて入ってきた。


「おう、サキヨマのおっさんが加わって益々楽になったぞ。何処を狙う!」

ミナトはサキヨマに顔を向けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺はブラックドッグのクロドに乗って故郷に戻って来た。商人に売られたとは言え、それまでは育てられた父がいる故郷の村。


村に入る前にクロドから降りて村に近付く。


木の柵に囲われた小さい頃から変わらぬ貧しい村。


木で作られた無人の門扉を開けて村に入る。


そして、実家に歩いて行く。


村の人達とは、誰も会わず懐かしの実家に着いた。家の中から隠れる様に見てる人がいたが無視だ。


今まで稼いだお金の中から、父が生活するのに困らない金銭を渡して、この国を出るつもりだ。


これは自己満足。自分を捨てたも同然の父に「どうだ! 俺はこんなに稼ぐ様になったぞ!」って言いたいだけかも知れない。


「血の臭いがするワン」

クロドが呟く。


「ん? ただいまぁ!」

クロドの呟きに違和感を感じながら、玄関の引き戸を開ける。


家の中には誰もいない。

俺は父がいつもいた部屋に入ると、赤い血の後が床を汚していた。


それ程昔では無さそうな血の跡。

「何があった?」


俺は家中で手掛かりを探し始めた。


「誰か来るワン」

クロドが俺の後からついてきた。


「ん? 行ってみよう」


俺とクロドは玄関に戻った。


すると玄関の外に村人達が、総出で待ち構えていた。


その中央には村長とその娘である元焔の剣の回復士ユイナがいた。


丸々と太って俺を睨むユイナ。

「ユウマァあああああああああ!良く村に顔を出せたわねええええ!」


「はぁ? ユイナこそ国外追放の身で村にいて良いと思ってるのか?」


「あ゙ぁ! 誰の所為で国外追放になったと思ってるのよぉおおおおお!」


「自業自得だろ?」


「煩い煩い! あんたは許さないんだからあああ! あんたのオヤジと同じ様に生きたまま切り刻んでやるわ!」


「え? 俺のオヤジを殺したのか? ユイナが殺したのか?」


「おっほっほっほ、焔の剣のメンバーと村人総出で罰を与えたわ」


「罰? なんの罰だ!」


「ユウマ、お前は村の英雄である焔の剣に、ポーターとして雇って貰ったのに、焔の剣を裏切り、陥れて国外追放にしたそうだな。だから貴様の父に貴様に替わって罰を与えたのだ!」

ユイナの父である村長が叫ぶ。


「父は関係ないだろう!」


「あんなクズは死んだ方が村の為だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る