第77話 シミツコ商会の地下

俺とブラックドッグのクロドと、ベーマタ騎士団長はシミツコ商会に急いだ。


シミツコ商会に着くと秘かに取り囲んでいる騎士が、ベーマタ騎士団長に話し掛けて来た。


「遅かったですね。今のところ動きはありません」


はぁ? シミツコが馬車で逃げてたぞ。


「シミツコが馬車で逃走を図ったので、捕まえて来たのだ」

ベーマタ騎士団長が騎士に告げる。


「え? すると包囲前に逃走を図ったのでしょうか?」


「恐らくな」


「申し訳ございません。もっと早く包囲に動いていれば良かったです」


「いや、アスカの件もあったのだ。しょうが無いだろう。ところでユウマ、商会の地下に賊と蜘蛛はまだいるか?」


俺は商会の内部を空間把握で確認した。

「いますね」


「良し、では突撃といこうか、念の為に言っておくが商会の人間の中には、何も知らない者もいるだろう。賊以外は出来るだけ殺さずにな」


「承知しました」


灯りが消えて暗くなった屋敷の門の前に立ったベーマタ騎士団長は、徐に石突きを前に槍を構える。


ドゴーン!!


ベーマタ騎士団長が槍で門を突くと、門が閂ごとぶち壊されて、閂がへし折れていた。


ベーマタ騎士団長が屋敷の敷地に入って、入口に向かった。


「なんだなんだ」

屋敷から人が出て来る。


「騎士団長のベーマタだ! シミツコ商会の地下に潜む『蜘蛛の牙』を捕まえに来た。シミツコ商会の者も連行する、大人しく投降しろ」


「え! すいませんが、会長は不在なので、詳しい事は分かりません。我々は無関係です」


「シミツコは既に捕まえている。邪魔はするな。これ以上俺の邪魔をするとシミツコと同罪とみなす。」


「ひぃ」

「ちょっと待ってください」

「俺は何も知らない!」


「煩い、サッサと表の騎士達に投降しなさい」


慌てて投降する使用人達。


ベーマタ騎士団長の後ろに騎士が並び、投降してきた使用人達を連行する為拘束する。


「割とあっさり投降してきたね。抵抗もないしね」


「そうだな。抵抗があると思ったが、呆気なかったな、逃げる者もいない」

俺とクロドとベーマタ騎士団長は屋敷の中に入った。


空間把握している俺はベーマタ騎士団長を地下の階段に案内標識する。


地下室のドアの前まで来た。


「この中に『蜘蛛の牙』の奴らがいます」


「どんどん行こう」


ベーマタ騎士団長は地下室のドアも槍でぶち壊した。


ドガッ!!


土蜘蛛が部屋の中からワラワラと出て来て、俺達に襲い掛かる。


ドシュッ!


ベーマタ騎士団長が先頭を進む土蜘蛛に槍を突き刺す。


俺は全ての土蜘蛛達を封印し、魔石を亜空間に収納した。


土蜘蛛達が死んだ事を確認し、封印を解除すると、土蜘蛛達が一斉に倒れた。


「ん? 何が起きた?」


「あぁ、蜘蛛たちを全て殺しました。魔石は貰いますよ」


「へ?」

唖然とするベーマタ騎士団長をおいて、奥の部屋に進む。


奥の部屋の扉を開けると……。


「うわっ! なんだなんだ」

「蜘蛛達はどうした?」

「お前は!」

「あ! あの時の男!」


その中には、殲滅した拠点から逃げ出した賊が潜んでいた。


ベーマタ騎士団長が気を取り直して、俺の後ろに来ていた。


「おい、動くなよ! お前等を連行する! 抵抗すれば殺す!」


「ああ、此奴ら、今、封印したから動けませんよ」


「へ?」

ベーマタ騎士団長はまた唖然とする。


俺とクロドは固まった賊達を避けて、更に奥の部屋にに進むと魔法陣を見つけた。


「これが土蜘蛛を召喚する仕掛けかな?」

「そうだワン」


「この魔法陣も収納しちゃえば、ここも終わりだな、後で騎士団に渡して解析して貰おう」


俺は蜘蛛を召喚する魔法陣を、亜空間に収納した。


「もう、終わったのか?」

ベーマタ騎士団長が俺に声を掛けてきた。


「そうですね。外の騎士達を呼んで、封印した賊達も連行してください」


「俺は門を壊しに来ただけだったよ」

ベーマタ騎士団長は納得のいかない顔で、外にいる騎士達を呼びに行った。

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