第75話 殺される覚悟

王家専属騎士隊の副隊長デミツヒがアスカに殺されて、騎士達はアスカを囲んだ。


「アスカ一緒に王都に行こう。俺が国王に釈明してやる」


ベーマタ騎士団長は槍を地面に突き刺し、両手を広げ戦わない事をアピールする。


「デミツヒを殺してしまったら、流石に無理だろう、ワタシにも分かる。」


アスカは大剣を肩に乗せて、半身で構える。


「むむ、……どうしても無理か?」


「無理だ。この国にはいられない」


ベーマタは俺を向いた。

「いつかの依頼をしたい」


「分かりました」

俺は頷きアスカを亜空間で封印した。


アスカは、いつの間にか大剣を振りかぶっており、そのままの姿勢で固まる。


「このまま、アスカを連れて王都に行くのですか?」

俺がベーマタに聞くと、


「いや、殺してから遺体を持っていくべきだろうな」


「俺は捕獲まではしますが、殺すつもりはありません。ベーマタさんが殺すなら、封印を一旦解除しなきゃいけませんね」


また、ヘタレの虫が顔を出す。女の子を殺すってやっぱり抵抗がある。


「うむ、君にアスカを殺す事まで押し付けるのは申し訳ないので、やむを得ないな、俺が始末しよう」


ベーマタは槍を地面から引き抜く。


「危ないワン!」

その時、クロドが俺の服を噛んで走った。


ズガッ!!


「え?」

振り向くと俺のいた場所に斬撃が打ち付けられた。


「ワタシに斬れないモノ無い!」

すると、大剣を振り下ろしたアスカが立っていた。


封印を斬った? ……のか?


ザワッ。

背筋が冷えて汗が流れる。

本物・・のSランク冒険者は怖い。


騎士達が剣を抜き身構える。

ベーマタも槍を構えた。

アスカが大剣を上段に振りかぶった。


俺を睨むアスカ。

ヤバっ、本気だ。


「ユウマ、逃げろ!」

ベーマタが俺に叫ぶ。


「ワタシに斬れぬ物は無い。ワタシに斬れぬ物は無い。ワタシに斬れぬ物は無い。ワタシに斬れぬ物は無い。ワタシに斬れぬ物は無い……」


ぶつぶつ独り言を言いながら、アスカは俺を注視している。


俺は亜空間を全身に纏うと共に、アスカの前に亜空間を展開した。


瞬間、振り下ろされる大剣。


「駄目だワン」

クロドが俺に体当たりして突き飛ばし、自分も勢いで転がる。


パリーン!

ズシャッ!

「ぎゃあああ!」


アスカの前に展開した亜空間が切断されて、俺の後方にいた騎士が両断されていた。


亜空間も切断するなんて!


態勢を立て直し身構えるクロド。

「封印が切断されたんだ、亜空間も斬られるワン」


「そうだね」

俺もアスカを睨む。


アスカは振り下ろした大剣をそのまま下段に構える。


「ワタシに斬れぬ物は無い。ワタシに斬れぬ物は無い。ワタシに斬れぬ物は無い。ワタシに斬れぬ物は無い。ワタシに斬れぬ物は無い……」


ベーマタが俺とアスカの間に走り込んで来て、槍を構えてアスカを見据える。


「ユウマ! 済まん。ここは、俺に任せて逃げろ!」


「退け!ベーマタぁ!」

アスカが叫ぶ。


あぁ、もう仕方ないなぁ。

俺はアスカの脳を亜空間に収納した。


アスカは不敵な笑みを浮かべた。


そして目と鼻と口から血を流し、剣を持ったまま仰向けに倒れた。


剣を抜いたら、殺される覚悟は出来てるんだったな。


アスカが息を引き取ったのを確認し、アスカの脳を元に戻した。


レベルアップのメッセージが頭に流れていた。

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