第74話 蛇剣デミツヒ

王家専属騎士隊の副隊長デミツヒと、剣姫アスカが向かい合う。


「ちょっと待ってくれ、アスカが第3王子を殺害したと言ってたが、それは本当か?」

ベーマタ騎士団長がデミツヒに問う。


「む、ベーマタのオヤジかぁ。あぁ、本当だ」


「証拠があると言ってたが、どんな証拠だ?」


「第3王子の屋敷が夜間襲撃された。その時、門や屋敷が切断されていた。王子も、た、縦に切断されていた。そんな事が出来るのはアスカしかいない。その日、アスカが王都にいた事は裏が取れているのだ」


「アスカが実際に第3王子を殺した現場を、見た者はいないのだな?」


「いない。いないが状況的にアスカしかあり得ない。国王からアスカの捕縛命令が出ているのだ」


「アスカを秘かに見張っている諜報部隊は何処にいった? そいつに聞けば一発だろう?」


「殺されてたよ。替わりの者がアスカにつく前に、アスカは王都を出た。」


「むむ、状況的にはアスカが圧倒的に不利だなぁ。」


ベーマタはアスカを見ると、

「アスカ、一緒に王都に行こう。俺も一緒に申し開きをする」


「そうだ、アスカ、大人しく剣を渡して拘束されろ」

デミツヒがアスカを睨む。


「断る! 剣は渡さない! ワタシはやってない!」


ん~、アスカは突発的にやりそうだからなぁ。殺してしまう事は充分あり得る。どうなんだろう? ただ、アラクネの最後のセリフからすると、蜘蛛の牙の陰謀としか思えないけどなぁ。


とボーッと考えていると……。


「ククク、どうやら、実力行使するしか無い様だな」

デミツヒは剣を抜いた。


ジャラッ。


お!蛇腹の剣だ。


「おい、止めろ! アスカを怒らせるな! お前には無理だ」


ベーマタが必死に大声でデミツヒを止めようとしたが、デミツヒの剣がアスカを襲う。


シュッ!!


蛇腹剣が伸びてアスカの足を払う。


ズシャッ!


アスカは跳躍し躱す。


「ワタシと戦うのだな!」


「ククク、殺しても良いと言われているのでな。間違って殺したらゴメンよ。ククク。」


デミツヒの手首のスナップで、蛇腹剣は鞭の様に踊りながら、アスカの首を狙う。


「剣を抜いた者は、殺される覚悟をしてるとみなすぞ」


アスカはしゃがんで躱し、大剣を八双に構えた。


「ククク、今日は随分戸惑っているじゃないか? いつもの思い切りが無いぞ」


「……そうだな。ワタシらしくない。貴様を斬れば、この国にはいられない。生まれ育った国と決別する覚悟は出来て無かった様だ」


「ククク、そのまま死んどけ!」


蛇腹剣が四方八方から襲う様に、高速で暴れ狂いながらアスカに迫る。


一刀両断。

ズバッシュッ!!


アスカが大剣を袈裟斬りに振り下ろすと、蛇腹剣は切断されて、デミツヒも切断されていた。


「ば、馬鹿な……」


ズズズ……、ドサッ。


デミツヒの左肩から右の腰まで線が入り、切断された上半身がずり落ちた。

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