第71話 蜘蛛の牙拠点制圧

俺達は『蜘蛛の牙』の拠点に向かった。


「良し、取り囲めぇ!」


小さい声で指示を出すベーマタ騎士団長。無言で動き出す騎士達。


程なくして、騎士の1人が報告に来た。

「配置完了しました」


「ご苦労! 良し、行くぞ!」


べーマタ騎士団長は騎士の報告に応えると、俺とアスカを見た。


「了解! 腕が鳴るよぉ。」


アスカは大剣を抜いて肩に担ぎ、俺とクロドは無言で頷く。


ベーマタ騎士団長を先頭に『蜘蛛の牙』の拠点の入口に来た。


入口には風体の悪い男が2人、うろうろしていた。


「何だぁ! お前等、ここがどこだか知ってのかぁ! あ″ぁ!」


眉を顰め顔を斜めにして、下から睨む男。


チンピラじゃん。こんなに見た感じ明らかにチンピラの男は、この世界で初めて見たよ。


「蜘蛛の牙のアジトだろ?」


ベーマタ騎士団長が応えた。


「ん? てめえ騎士か──」


ズシャッ!!


男の首が飛んでいた。


「問答無用よ!」


アスカが大剣を横に振っていた。


「だな!」

ベーマタ騎士団長の槍がその後ろの男の胸に突き刺さる。


ズシュッ!!


ベーマタ騎士団長は、男を蹴飛ばし槍を抜く。


「どんどん行くわよ!」


アスカは大剣を担いで、散歩をしてる様に、気負わず軽い雰囲気で歩き出した。


「おう!」


ベーマタ騎士団長は槍を右手に持って、進んで行く。


ドゴッ!!!


ドアを槍の石突きで突き破り、拠点の中に入ると広めのホールに大勢の蜘蛛の牙メンバー。


「ん? 誰だぁ。」


ブウン!


アスカの大剣の風切り音が唸り、手前に座っている敵の首を薙ぎ払うと、後ろの人まで首が落ちる。


「て、敵襲だぁあああああ!」


ベーマタ騎士団長は槍で刺しては引き、刺しては引き、まるで突きの練習をしている様な気軽さで、周りの人の急所を寸分違わず突き刺し、命を奪っていった。


クロドも的確に首を噛みきり、前足で頭を潰す。


あっと言う間にホールにいた人達の、半数以上の屍が散乱した。


あぁ……、今まで生きていた人達が数十秒の間に屍に変わりゆく様を見ていると、血の臭いもしてきて、流石に気持ち悪い。


「お前等ぁ! 何だよぉ!」

「ひぃ」

「助けてえええ!」


恐怖から逃げようとする者も現れたので、取り敢えず、ホールにいる敵の足は全て封印し移動出来なくした。


殺すのかぁ……。

殺さないと駄目だよなぁ……。


取り敢えず身体全体に亜空間を纏って、攻撃は受けない様にしよっと。


ボーッと殺戮の様子に見入っていたら、俺の首筋にナイフを当てようとする者がいた。


「それまでだぁ! 止まれ! 止めないとコイツを殺すぞぉ!」


と言うドスの効いた声がする。

俺の直ぐ後ろから……。


ベーマタ騎士団長は、チラリとこちらを見たが、ニヤリと笑って、殺戮を続ける。アスカもこちらを見たが「可哀想に」って言う表情をして、殺戮を止めない。クロドは全く気にもしない。


「くっ、てめえの命はどうなっても良いらしいな、可哀想に」


俺に囁く声。


「はぁ、多分微塵も危険が無い事を、知っているからでしょうね」


俺は後ろの男に答える。


「はぁ? 俺達もやられっぱなしじゃいられねえんだ。良い夢を見ろよ。」


後ろの男がナイフを動かす。


カキン!


首に纏った亜空間がナイフを弾く。


「お前がな!」

俺は後ろを向いた。


「え? 何故斬れない……???」


俺は後ろ男の首から下を封印した。


「さて、どうやって死んで貰おうか?」


「ひ、ひぃ、か、身体……が……動か、……ない。……た、す、け、て」


「先ずは武器はいらないよね。」

男の武器を亜空間に収納した。


ん~、どうしよう。


「すいません。見逃してくだひゃい」


「殺される覚悟がある人しか、殺そうとしちゃ駄目だと思うよ」


「ひぃ──」


脳だけ亜空間に収納し、死んだ事を確認した後、脳を元に戻して封印を解除し、こちらに倒れると面倒なので蹴飛ばした。


ドガッ! ドタン!


良し、覚悟は決めた。


俺はアスカとベーマタ騎士団長、クロドが殺戮しているところへ、ゆっくりと歩き出した。

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