第65話 天槍ベーマタ

「アスカぁ!そのくらいで止めておけ!」

アスカ後ろから大声が聞こえた。


「誰よぉ!」

アスカ俺から飛び退き、距離を取ると声がした方に振り向いた。


「よぉ、久しぶりだな」


右手あげた偉丈夫の髭オヤジ、左頬に刀傷があり、右眼は眼帯を着けている。


「ああ!ベーマタじいさんだ。」

どうやらアスカの知り合いのようだ。


「ユウマくんだね、儂はベーマタだ。新任の騎士団長としてこの領地に来た。宜しくな。」


「はい。ユウマです。宜しくお願いします。」

取り敢えず頭を下げておこう。


「いやはや、それにしても流石ダンジョン攻略者だ。アスカに斬れないモノがあるとはなぁ」


「は、はぁ。そうですか」

この質問なんて返せば正解何だ?


「この無礼者は、ベーマタじいさんの知り合いなの?」

アスカはベーマタに声を掛けた。


「いや、初対面だよ。彼はダンジョン『魔獣の窟』攻略者である、Cランク冒険者のユウマくんだ。」


「Cランクぅ? 何故斬れなかったんだ。たかがCランク如きに……」

ぶつぶつ独り言を言うアスカ。


ベーマタはアスカから俺に顔を向ける。


「ユウマくん、彼女はSランク冒険者の剣姫アスカだ。」


「え? Sランク! それは、子供なんて言って申し訳ありません。ですが、そうだとすると逆に俺の相棒クロドに刃を向けたのは、許せませんねぇ、街中で剣を抜いて攻撃するなんて、犯罪でしょう」


「な、なにぃ! ワタシだって許せないわ! しかもこんな凶獣を放し飼いにするなんて危険極まりないわ!」


「凶獣? アスカちょっと待て、クロドの名前に聞き覚えはないか?」

ベーマタはアスカに尋ねた。


「え? も、もしかしたら、英雄ヒナタの相棒のクロドの子孫?」


「儂はヒナタの相棒のクロドだワン」


「マジ? 本物なの?」


「本物だワン」


「きゃあああああ!ごめんなさ~い」

アスカは大剣を背中に背負うと、クロドに抱きついた。


「ユウマくん、アスカは女性で英雄になったヒナタさんに憧れているのだ」


「はぁ、そうですかぁ……」

だからと言って、許せない事はあるよねぇ。


「取り敢えずギルドに入ろう。ほら、アスカ行くぞ。」


「はいはい。」

アスカはクロドを撫でながら、俺達と一緒にベーマタの後ろに続いて、ギルドに入った。


納得はいかないが、取り敢えずベーマタさんの後についていく俺。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


アスカとベーマタと一緒に、ギルド長の執務室に連れて行かれた俺とクロド。


何故俺達はここにいる?


ギルド長から説明された。

キラーデュラハーン討伐と『蜘蛛の牙』討伐の為に、アスカを王都から呼び出したとの事。


『蜘蛛の牙』討伐の為、俺に拠点の情報を教えて欲しかったらしい。


ベーマタさんは『天槍』の二つ名を持つ槍の達人で、王都の騎士隊を引退し、この都市に来たらしい。


アスカと共に『蜘蛛の牙』討伐をする予定だそうだ。


「がははは、現役を引退したロートルじゃよ」と本人は言っている。


アスカは『剣姫』の二つ名で「万物切断斬れぬ物無し」のスキルを持つ剣の達人だ。


今まで斬れなかった物は無かった事から、俺の亜空間を斬れなかった事が非常にショックだった様だ。


「何で斬れないのよ。いい、『蜘蛛の牙』を殲滅するときは良く見てなさい」って何だかアスカに怒られてるんだけど、悪いのはいきなり斬り掛かってきたアスカの方だよ。

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