第64話 剣姫アスカ
「ユウマ、あ、ありがとう。そして、この前は本当にごめんなさい」
メイが俺にしおらしく頭を下げる。
「もう良いよ。早く帰りな」
まだ、何か言いたげなメイを置いて、俺とブラックドッグのクロドは屋敷を後にする。
いや、メイと何か話すなんて無理でしょ。話す事も無いし。流石にわだかまりはまだあるよねぇ。
その後、謹慎中であるにも関わらず、メイを騙して拠点に乗り込んだ事が発覚した、サキヨマとトカツモとリマサノはめでたく騎士団を退団になった。
日傘が刺さった尻は回復魔法で回復して貰ったが、今でも何か刺さってる感覚があるとか。痔になったとか。それ以来快感になったとか噂が流れた。
サキヨマの尻に傘が刺さった事を知ってる人って……。
メイ!お前も腐女子だったか。
サキヨマ達3人が退団すると共に情報部門のトヨシモも騎士団を退団していた。
サキヨマ達3人はトヨシモに誘われて、この都市から姿を消した事は誰も知らない……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
数日後、冒険者ギルド前にて。
俺とブラックドッグのクロドがいつもの様に、冒険者ギルドに向かっていると……。
「たああああああああ!」
大剣がいきなりクロドを襲った。
クロドは素速く躱す。
「何だワン」
クロドは大剣を持つ女の子を見る。
美少女!大きくなったら、間違いなく美人をになる事が確定している真っ赤な髪の女の子。
「強力な魔力を放ち、邪悪な姿!ただのブラックドッグではないなぁ!凶悪なモンスターと見た!」
身長140cm程度の少女が、自分の身長と同じぐらいの大剣を、軽々と振り上げ構えていた。
「子供? 俺の相棒にいきなり斬り掛かって来て、どう言うつもりなの?」
「子供じゃなああああああい!ワタシは剣姫アスカだぁ!」
「ケンキ・アスカ?」
「ユウマ、見掛けで判断するなワン、このお嬢さん腕が立つぞワン」
「えぇ? まだ子供だよ」
「またぁ!子供って、言うなぁ!」
アスカが俺に剣を振り下ろす。
俺は違和感を感じて、身体全身に亜空間を纏った。
相手が何をするか、事前に分かっていれば通常躱すのは簡単なはずなのに、俺が大剣を掴む為に出した亜空間のバリアを纏った右手を擦り抜けて、大剣は俺の右肩に直撃した。
普通なら右肩を斬り落とされる攻撃だが、事前に亜空間を纏っていたので、大剣を弾く。
カキン!
「は、弾かれたぁ?」
アスカは驚愕の表情で俺を見詰めた。
通常剣を振り上げただけでは躱さない。1歩踏み込み、剣を振り下ろした瞬間に躱す。
しかし、アスカの足の運びと剣速は特殊で、いつ踏み込まれたのか、いつ振り下ろしたのか全く気付かなかった。
分かっているのに、躱せないで斬られるパターンだ。
「うぅううううう、何故斬れない!何故斬れない!何故斬れない!何故斬れない!何故斬れない!何故斬れない!
何故斬れない!何故斬れないいぃ!」
アスカは叫びながら俺に剣を繰り出す。
カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ……。
真上から、下から、右斜め上から、左から右へ、右斜め下から、左斜め上から、右から左横薙ぎに……。
重そうな大剣を軽々振り回す千変万化の太刀筋は。目で追う事も出来ぬ剣速で、縦横無尽に繰り出して、いつまでも止まらない。
この子……。なに?
みんな見てるし止めてくれないかなぁ?
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