第63話 土蜘蛛

「大変だぁ!助けてくれええええ」

騎士団のリマサノが俺に向かって走って来た。


「はぁ、何があったんですか? 厄介事は騎士団で解決してください」


「それが、冒険者の娘が『蜘蛛の牙』に捕まったんだ」


「冒険者?」


『蜘蛛の牙』の拠点を空間把握で確認すると……。


「土蜘蛛!!」


蜘蛛のモンスターが多数蠢いている様だ。


「クロド!行くぞ!」

「了解ワン!」


俺はブラックドッグのクロドに乗って、『蜘蛛の牙』の拠点に急いだ。


「え? 土蜘蛛?」

リマサノの驚きながら後を付いて来る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


『蜘蛛の牙』の拠点に着くと。


大きめ屋敷が目の前にそびえる。


「きゃああああああ」

女性の悲鳴が屋敷の中から聞こえた。


「クロド!」

俺はクロドから飛び降りてクロドを見た。


「ワン」

ドガッ!


クロドは「承知」とばかりに一声吠えると、屋敷の門に体当たりして、門を破壊し、入口に駆けていく。


ドガン!


そして、入口の扉も突き飛ばした。


俺とクロドは屋敷の中に入った。


そこは広めのホールで、土蜘蛛に囲まれて、剣を構えるサキヨマとトカツモと……。


ん? メイ?


冒険者ギルドの受付嬢のメイがいた。


何やってんだ?


「ヤだぁ、こっちに来ないでぇ」

手に持っていた日傘を、滅多矢鱈に振り回しているメイ。


「メイ! 何やってんだ? どうしてこんなところにいる?」


「ユウマぁ!ひん、助けてええええ」

泣き顔で俺を見るメイ。


俺の顔を見て、ちょっと安堵した様子のメイ。


冒険者の女性って、メイ?


空間把握で屋敷を確認したが、他にいないので、捕らえられた女性冒険者ってメイの事なんだろうな。


ガツン!


メイを刺そうとした土蜘蛛の爪を、亜空間で弾く。


「くっ、貴様ぁ、ユウマか」

全員制圧した拠点のボスがいた。


「土蜘蛛、奴らを襲え!みんなはその間に逃げるんだ」


ボスの命令で、『蜘蛛の牙』の人間は屋敷の奥に逃げて、土蜘蛛が襲って来た。


サキヨマとトカツモが大剣を振り回して、土蜘蛛を遮る。


グシャッ!


クロドが飛び出し、メイの前に来た土蜘蛛を前足の爪で潰した。


ホッと安堵の溜息を漏らすメイは、ワナワナと怒りが込み上げて来た様だ。


「私を騙したのねえええええ」


メイがサキヨマの尻に日傘を突き刺した。


ドスッ!!

「おぅつぅ!」


俺は土蜘蛛達の魔石を空間収納して、倒れ落ちた土蜘蛛の死骸を亜空間に収納した。


はぁ、何だろうこの人達。


尻を高く上げて倒れるサキヨマ。

その尻には日傘が刺さっていた。

目を見開き驚愕のトカツモ。


俺は2人を置いて屋敷を出ると、後ろからメイが付いて来る。


そして追いついて来たリマサノと擦れ違う。


「サ、サキヨマ様あああああああ!」

サキヨマの姿を見て大声で名前を読んで駆け寄るリマサノ。


『蜘蛛の牙』も騎士団もどうでも良いので、これ以上はここに居なくても良いと思っている。逃げる『蜘蛛の牙』も追わないし、サキヨマ達も放置だ。

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